Inner Revolution / Adrian Belew


自分がギターを少し弾くので、ミュージシャンの中でも、とりわけギタリストには興味が強い。著名なギタリストのソロアルバムであれば、どうしても聴きたくなる。だが、ギタリストのソロアルバムの中には、ギターを意識しすぎるあまり曲全体のバランスが悪かったり、逆にギターを控えめにしたたために凡庸な曲に落ち着いてしまう、ということがある。残念ながらエイドリアン・ブリューもそのようなことが感じられ、またエイドリアン・ブリューの場合は、ギターだけでなくベースやドラムなど全部のパートを自分でやってしまいたくなる性分のようで、ますます、作品を客観的に見れないところがある、と感じていた。だが、このアルバムは、違う。すごくいいのだ。

このアルバムでのエイドリアン・ブリューは、他のソロアルバムでと同様に、実に伸びやかに演奏を楽しんでいる。それとともに、曲に推敲を重ね、楽器の組み合わせや曲の展開を工夫し、それぞれの曲が楽曲として完成度が高い。しかも、エイドリアン・ブリューのギターは、前へ出過ぎることなく、エイドリアン・ブリューらしく暴れてみせてくれる。1曲目のタイトル曲「InnerRevolution」からそうだ。冒頭のギター音は、エイドリアン・ブリューしか出しえないものだ。この曲はいかにもエイドリアン・ブリューの作品らしさが出ている。2曲目「ShakeItUp,Baby」は、再結成キング・クリムゾンの「ディシプリン」または「ビート」、「スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペア」に入っていてもおかしくない曲。変則7拍子である。ギターソロはシンセ・ギターか。3曲目「There’sSometimeIn」は「ロジャー」あたりのデビッド・ボウイ的なポップさがある。4曲目「BigBlueSun」では、2本のバイオリン、ビオラ、チェロのストリング・カルテットが登場する。もちろんエイドリアン・ブリューのギターも負けてはいない。ビートルズ的なポップな曲。5曲目「OnlyADream」はアメリカン・ロックだが、時折のどたばたジャングルドラムがエイドリアン・ブリューらしい。6曲目「Birds」はあっさりとしたポップな曲。7曲目「I’dRatherBeRightHere」はロカビリー風。こういった雰囲気もエイドリアン・ブリューは好んで取り上げる。8曲目「TheWarInTheGulfBetweenUs」はXTC風のポップ。9曲目はピーター・ゲイブリエルあたりがやりそうな曲風。10曲目「Everything」と11曲目「Heaven’sBed」は再びXTC風。そして最後の12曲目「MemberOfTheTribe」はロックンロールだが、エイドリアン・ブリューのギターが容赦なく炸裂する。大満足のエンディングだ。

このアルバムは1992年に発表された。アトランティック・レコードから発売された日本盤のCDで、解説にはパーソンズの本田毅が文を書いている。

2004.11.24