Return To Fantasy / URIAH HEEP


ユーライア・ヒープとの出会いは、名盤「対自核」ではなくてこのアルバムだった。当時ディープ・パープル、レッド・ツェッペリンから、キッス、エアロスミス、クイーンというのが高校生にとってロックの王道であって、それらの音楽に激しく心を奪われながら、クリームを聴いている友人にちょっと大人びた雰囲気を感じつつ、もうひとつ共感を得ることができなかった。もっと素晴らしいロックが他にあるのではないか、と思いつつ、手当たり次第に聴きまくっていた頃に出会ったのがこのアルバムと「ワンダーワールドwonderworld」だった。

アルバム「ワンダーワールド」のベーシストは、ゲイリー・シンGaryThainだったが、アルバム発表後のライブツアーで感電事故に合ったようだ。その後、バンドに復帰することが難しく、当時ロキシー・ミュージックに参加していたジョン・ウェットンに声がかかり、このアルバムに参加することになる。このアルバムのメンバーは、ミック・ボックスMickBox(guitar)、デビッド・バイロンDavidByron(vocal)、ジョン・ウェットンJohnWetton(bass)、リー・カースレイク(drums)、ケン・ヘンズレイKenHensley(key、guitar、vocal)

今でもユーライア・ヒープの最高傑作は「対自核」といわれるが、俺にとってのユーライア・ヒープはこのアルバム、とりわけ冒頭のタイトル曲「リターン・トゥ・ファンタジー」だ。何度も転調を繰り返し、複雑な展開をみせながらドラマチックな感動を与えてくれる。2曲目「ShadyLady」はブギ。スライドギターがいい味を出している。3曲目「Devil’sDaughter」はスピード感のある曲で、さりげなく拍子を飛ばすリフが印象に残る。4曲目「BeautifulDream」はタイトル曲と対をなすような曲で、アルバム前半を締めくくる。確かレコードではここまでがA面だったはずだ。

5曲目「PrimaDonna」はアメリカン・スタイルのブギ。6曲目「YourTurnToRemember」はブルースで、アメリカを意識した演出が続く。スピード感のある7曲目「Showdown」に続いて、しっとりとしたバラード「WhyDidYouGo」、そしてロック・オペラ調の「AYearOrADay」でアルバムは終わる。この最後の曲は、映画「ファントム・オブ・パラダイス」でジェシカ・ハーパーが歌うシーンを彷彿とさせる。ファントム・オブ・パラダイスも1975年の映画だ。

オリジナルアルバムはここで終わりなのだが、このCDにはボーナストラックが4曲収められている。トラック11「ShoutItOut」はシングルカットされた「PrimaDonna」のB面の曲。重量感のある曲で、ディープ・パープルがやりそうな感じ。トラック12「TheTimeWillCome」はシングル「ReturnToFantasy」のB面の曲。いずれもアルバムに正式に収録しても良いできの曲だ。「トラック13は「BeautifulDream」のデモバージョン。やや荒削り。トラック13は「ReturnToFantasy」を短く編集したもの。やはり短くては、良さが半減する、と変に納得。

ユーライア・ヒープを脱退したゲイリー・シンは、このアルバムがリリースされた直後に27歳の若さで死亡した。精神安定剤の大量摂取と言われている。さらに次のアルバム「ハイ・アンド・マイティHighAndMighty」リリース後には、デビッド・バイロンがバンドを離れている。ファーストアルバムからの中心メンバー、ミック・ボックス、デビッド・バイロン、ケン・ヘンズレイの3人が袂を分かつことになるのだ。さらにジョン・ウェットンもバンドを離れることになる。

このアルバムは1975年に発表された。このCDは1996年にCastleCommunicationsPLCから発売された英盤だ。

2004.5.2