154 / WIRE


ワイアーを一番最初に聴いたのは、このアルバムだった。買ったのは輸入版のLPで、おまけのシングルレコードが付いていたことを覚えている。このシングルは、初回盤のみのおまけだったらしい。レコード棚をひっくり返せば出てくるはずだ。その次に、ファーストアルバム「ピンク・フラッグ」、セカンドアルバム「チェアーズ・ミッシング」を聴いた。CDは逆に「ピンク・フラッグ」「チェアーズ・ミッシング」を持っていたが、ようやくこのアルバムを手に入れた。あらためて聴いてみると、ファーストアルバム、セカンドアルバムと比べて、この「154」は決定的に違うものだと思う。そして何よりも驚いたのは、もう20年近く耳にしていないはずの楽曲が、どれも鮮明に脳裏に焼きついていたことだ。どの曲も懐かしく、そして新たな感動も感じる。

とにかく音が重い。アルバム1曲目「I Should Have Known Better」からワイアーの世界にどっぷりと浸れる。2曲目「Two People In A Room」はストレートなパンクだが、音の使い方が上手い。3曲目「The 15th」は一転してポップな曲。XTCの雰囲気もあるが、独特の哀愁はWIREならでは。4曲目「The Other Window」はサウンドコラージュにモノローグが入ったようなトラック。5曲目「Single K.O.」はねじれたポップさが感じられる、これも印象的な曲。そしてアルバム前半を締めくくるかのような、6曲目「A Touching Display」。後半の盛り上がりはとってもかっこいい。感動的だ。

アルバム後半のトラック7〜13がオリジナルの収録曲で、その後、「Song I」「Get Down(Part1&2)」「Let’s Panic Later」「Small Electric Piece」の4曲が、初回盤のおまけとしてついていたシングルEPの収録曲。そして最後のトラック18「Go Ahead」は、アルバム完成後に録音され、シングルとして発売された曲。つまりEMI時代の最後が、このCDで全て聴けるようになっているのだ。

アルバムタイトルの「154」という数字の意味だが、これは当時バンドが行ったライブの回数だったところから取られた、という話を聞いたことがあるが、真偽はわからない。それにしてもこのアルバムを聴くと、WIREは「音」の使い方を実によくわかった連中だったことにあらためて気付かされる。このままグループが発展的に続いていれば、もっと多くの伝説を作り出したに違いない。そう思うと、少し残念な気がする。このアルバムは1979年に発表された。このCDは1994年にディジタル・リマスターされてEMI/HARVESTから発売された、英盤だ。

2003.11.3