Time To Kill / Sophie Zelmani


このアルバムでソフィー・セルマーニは、デビュー時のイメージとは違った新しい自分のスタイルを確立した。これはソフィー・セルマーニのサードアルバムだ。ややクールに背伸びした感のあったセカンドアルバム。あれはまた可愛いものであったが、彼女の魅力が伝わりにくい出来栄えだと思われた。だがこのアルバムにはセカンドアルバムになかった艶がある。再びデビュー当時の自信を取り戻した、と言ってもいいかもしれない。囁くように歌う声は、本当に魅力的だ。ある種の諦観のような、世俗を超越したかのごとき崇高さも感じる。

私生活ではセカンドアルバムを発表した後の1999年に女の子を出産したということだが、このことが彼女の心にいったいどのような変化を与えたのだろうか。1曲目の「マイ」は娘のことを歌っているそうだが、喜びを素直に表現したものではない。2曲目の「ルージング・ユー」は別れを予想させる。これはラーシュ・ハラピの作詞作曲によるもののようだ。3曲目の「ノスタルジア」は昔の友達を懐かしむ歌だが、複雑な心境を描いている。4曲目の「タイム・トゥ・キル」はタイトル曲だが、かなり追い詰められた状況を歌ったものだ。5曲目「ホワイ」と6曲目「ハッピヤー・マン」も別れに関する曲だ。

7曲目の「ドリーマー」は希望が感じられる曲だと言っていいだろう。この曲はとてもいい。幻想的な雰囲気が、夢見ごこちにさせてくれる。8曲目「オン・ユア・ウェイ」は、すれ違う心を埋める方法はなくて、あなたのことは理解できない、というもの。9曲目「アイ・ドント・ノウ」は、共に暮らすことに決断を迫るような歌。10曲目「ゴーン・ソー・ロング」は、去っていった貴方が今更戻ってきてどうなるのでしょう、といった曲。11曲目「ファイヤー」は、唯一ストレートな愛の歌だ。最後のトラック、12曲目「モースト・インコンヴィニエント・タイム」はボーナス曲で、恋に陥りそうな出会いの始まりのようなシチュエーションを歌にしている。

静かな曲の中に、クールであるが断固とした意思を感じるアルバムだ。そして、これまで以上に、ソフィー・セルマーニの歌は魅力的だ。このアルバムは1999年に発表された。このCDはエピックレコードから2000年に発売された日本盤だ。

2003.9.3