Precious Burden / Sophie Zelmani


ソフィー・セルマーニのセカンドアルバム。このアルバムを最初に聞いたとき、実を言えば、少しがっかりした。ファーストアルバムで見せてくれた魅力は、向かうところ敵なし、というか、矢でも鉄砲でも持ってこい、というか、爽快さにあふれた清々しさであったが、このアルバムでは、シンガーとしての成長はみられても、ファーストアルバムに感じたパワーが失われていると感じられたからだ。

このアルバムの印象は、1曲目の「リーヴィング」で決まってしまう。とてもゆったりしたテンポの曲で、ソフィー・セルマーニのボーカルは、低い声でつぶやくように歌う。ファーストアルバムでみせてくれた溌剌とした声は、ここには、ない。それに伴奏の部分を冗長に感じてしまう。「俺が聴きたいのは伴奏じゃない。ソフィーの歌だ」と言いたくなる。2曲目「ブラック・デイ」も暗い雰囲気だし、3曲目のテーマ曲「プレシャス・バーデン」も、荒涼たる感じにさせられる。いったい何が違うのだろうか、と考えながら聴いていると、ソフィー・セルマーニの歌が全体に低音に偏っている、ということに気付く。

何度も聴いていると、次第にこのアルバムに込められた心がわかってきたような気がしてくる。そして聴き手を戸惑わせたものは何だったのかといえば、新しい自己表現に挑戦する、やや背伸びしたソフィー・セルマーニの姿なのだと言うことができるだろう。ファーストアルバムでの溌剌とした歌いっぷりは、彼女の魅力を余すところなく伝えてくれた。しかしこのアルバムでの歌声は、トーンが低いので、しっかりと聴かないとその魅力がわかりにくいのだ。ソフィー・セルマーニの声は、やはり素晴らしい。そしてこのアルバムの良いところは、唇の動きや舌使いの音、喉の奥の震えまでが伝わってくるほど、声がリアルに録られているところだ。

ソフィー・セルマーニを聴きたい、と思ったとき、今の俺は、やはり、ファーストアルバムを手にとってしまうだろう。だがこのアルバムには、ファーストアルバムとは違った魅力がある。そのことに俺は少しずつ、気付きつつある。このアルバムは1998年に発表された。このCDはエピック/ソニーレコードから発売された日本盤だ。

2003.9.2