Sophie Zelmani / Sophie Zelmani


いま、最高に気に入っているアルバムだ。心を癒されたいなら、これを聴け。スウェーデンのシンガーソングライター、ソフィー・セルマーニのファーストアルバム。背伸びをせず、虚飾もなく、等身大の自分を表現した、素直なアルバムだ。何も新しいことはしていない。ほんとうに素朴な曲の数々に、どうしてこんなにも惹かれてしまうのだろう。声がいい。曲がいい。歌詞がいい。結局のところ、魅力あるミュージシャンがやったことは、どんなに普通のことであっても、良いものに結実するのだ。

そして何度か聴いていて気が付いたのだが、バンドの演奏もいいのだ。ソフィー・セルマーニというスターを引き立てるために演奏しているのではない。自分たちも楽しんで曲作りに参加している、という雰囲気が伝わってくる。解説を読むと、作曲はソフィー・セルマーニ自身で、それをスウェーデンの人気バンドである「ブー・カスペルス・オルケステル」のリーダー、ラーシュ・ハラピが認め、彼が中心となってアルバムは作られたらしい。

1曲目「アイド・ビー・ブロークン」は恋の歌。曲の後半で「From now on, I’ll always share my loving mind」と歌うところがあるが、この節回しをどこかで耳にした覚えがあると思い、ずっと考えていて思い出した。ジョニ・ミッチェルの「ナイト・ライド・ホーム」と同じだ、と思って聴きなおすと、あまり似ていなかった。2曲目は「スタンド・バイ」。これも恋の歌だ。「スタンド・バイ」と繰り返すところが表情豊かで心にしみる。3曲目「ゼア・マスト・ビー・ア・リーズン」はリズミックな曲。自立しようとする娘と母親の葛藤を歌ったように感じる。4曲目「オールウェイズ・ユー」も恋の歌。いつも考えるのはあなたのことよ、という歌だ。5曲目の「ア・サウザンド・タイムス」は、出だしのホーンがかっこいい。これは失恋の歌で、なかなか立ち上がれない悲しさを歌にしている。6曲目「テル・ミー・ユア・ジョーキング」は子供の目から見た両親の離婚を歌っている。7曲目「ウーマン・イン・ミー」は、ある夜、なんだか怪しい気持ちになる、という、ちょっと変な想像をしてしまいそうな曲。8曲目「ユー・アンド・ヒム」はちょっとしたストーリーになっている。ある夜、家に帰るタクシーを待っていると、身なりの汚い男がやってきて話し掛けてくるのだ。最初は相手にしなかったが、気になるところもあって少し話をしてみる。だが結局は、なにも起こらないのだが、ちょっとした余韻を感じさせる結末になっている。訳詞を見ながら聴いてみたい曲だ。9曲目は「アンティル・ドーン」。これも恋心を歌ったものだ。10曲目「アイル・リメンバー・ユー」は、ある朝、しずかに眠っている彼の元を去っていく女性のストーリーだ。11曲目は「アイル・シー・ユー」。これは彼との出会いを後悔するような内容の歌になっている。このトラックではトランペットがソロを取っているが、最後の12曲目はこの曲のアナザー・バージョンとなっていて、こちらではバイオリンがソロを取っている。

俺はこのアルバムをCD店で見て、ジャケットの清々しさに惹かれて買ってみた。何も予備知識なしに聴いたのだが、それがよかった。感動もひとしおだったな。若い才能が全開のアルバムだ。このアルバムは1995年に発表された。ソニー・ミュージック・エンタテインメントから発売された日本盤のCDだ。

2003.8.31