Real Book / Steve Swallow


スティーブ・スワロウのベースを最初に聴いたのは、俺の記憶ではカーラ・ブレイのアルバム「歌うのなんて好きじゃない」でだ。それから少しして、カーラ・ブレイとマイケル・マントラーが作ったレーベル、Wattのコンピレーションアルバム「ザ・ワット・ワークス・ファミリー・アルバム」で、とても爽快な曲「クラブ・アレイ」を聞いて好きになった。この曲はどちらかといえばフュージョン的なアプローチの曲で、スティーブ・スワロウのエレクトリックベースがぴったりだった。だがこのアルバムは、JAZZを真正面から捉えたアルバムだ。メンバーは、トランペットとフリューゲルホーンがトム・ハレルTomHarrell、テナーサックスがジョー・ロバーノJoeLovano、ピアノがマルグリュー・ミラーMulgrewMiller、ベースがスティーブ・スワロウ、そしてドラムはジャック・ディジョネットJackDejohnetteだ。

1曲目「バイト・ユア・グランドマザー」は、オーネット・コールマンを想起させるホーンセクションの独特なメロディーが曲の骨子を支えている。スピード感のある曲で、ジャック・ディジョネットのドラムが曲の冒頭から大暴れしている。2曲目「セコンド・ハンディー・モーション」はラグタイム・ブルース風。からりとした明るい作りにされていて、適度に気だるい感じがいい。ユーモアたっぷりのピアノソロも面白い。3曲目はバラードで「ロング・トゥゲザー」と名づけられた曲。スティーブ・スワロウの張りのあるベースが、まるでギターのようにメロディーを奏でる。4曲目「アウトフィッツ」は元気のいい曲だ。どのメンバーも気負わずのびのびとしたプレイをみせてくれる。曲の後半部分で、シンコペーションで攻めるピアノとドラムの一騎打ち、といったところがスリリングだ。5曲目「シンキング・アウト・ラウド」はややゆったりとした曲。だがソロの部分はスリリングだ。

スティーブ・スワロウのいかにもエレクトリック・ベースという、ごりごりしたソロで始まる、6曲目「レッツ・イート」に続いて、「ベター・タイムス」「ウィロウ」「マディ・イン・ザ・バンク」「ポニーテイル」と、アルバムには全部で10曲が収められている。すべてスティーブ・スワロウのオリジナルだ。

CDジャケットの裏には、ベースを片手に気取ったスティーブ・スワロウがいる。顔をしかめているが、ひょうきんで人懐っこい表情。その人柄がうかがえる写真じゃないか。



念のために説明するが、冷たい飲み物のコップを置いたシミができたようなジャケットは、これは俺が粗末に扱ったのじゃなくて、最初からこういうデザインになっているのだ。このアルバムは1993年の12月、ニューヨークのグロッグ・キル・スタジオGrogKillStudioで録音され、1994年に発表された。このCDはWattWorks,Inc./ECMRecordsGmbHから発売された米盤だ。

2003.8.24