爽やかに、熱い。エド・マンはフランク・ザッパFrankZappaのバンドで活躍したマリンバ奏者だ。パーカッショニスト、という言い方がいいのかも知れないが、単にパーカッション一般ではなく、マリンバ奏者としての評価が高い。このアルバムはエド・マンのファーストソロアルバムだ。
フランク・ザッパのバンドはメンバーの入れ替わりが激しいが、その中でもエド・マンは中期から後期にかけて在籍し、比較的長い期間バンドに在籍して活躍したようだ。このアルバムの解説には「シーク・ヤブーティ」「たどり着くのが遅すぎて溺れる魔女を救えなかった船(ShipArrivingTooLateToSaveADrowingWitch)」などに参加していたと書かれている。確かにフランク・ザッパのアルバムにおいて、マリンバあるいはビブラフォンは重要な曲のポイントとなっている場合がある。アルバムの数が膨大で手におえないのだが、どの作品にエド・マンが加わっているのか、調べてみたい気がする。
このアルバムには、ドラムのチャド・ワッカ−マンChadWackerman、セッション・ベーシストのダグ・ランDougLunn、ギターのマイク・ホフマンMikeHoffman、トロンボーンのウォルト・ファウラーWaltFowler、トランペットとフリューゲルホルンのブルース・ファウラーBruceFowlerが参加している。ホーンセクションを担当するウォルト・ファウラーとブルース・ファウラーは兄弟で、チャド・ワッカーマンとともにフランク・ザッパのバンドでも一緒だったメンバーだ。
エド・マンはマリンバ、ビブラフォン、エレクトロニック・マレット、そしてキーボードとパーカッションを担当している。だがあくまでも曲のリズムを基本的に支えているのは、ドラムのチャド・ワッカーマンだ。このアルバムを聴いて、チャド・ワッカマンのドラムの歯切れの良さにあらためて感動する。そしてベースのダグ・ラン。おそらくフレットレスであるエレクトリック・ベースの音は、力強くありながら、セクシーな瞬間を垣間見せる。
マリンバという楽器がサウンド的に地味なので、BGMとしてさらりと聞いてしまうこともできる。だが冒頭に書いたように、このアルバムは実に熱いのだ。一曲目「ディス・イズ・トゥモロウ」はC調でありながら、後半部分ぐいぐいとした盛り上がりを見せる。ベースのダグ・ランも曲を力強く引っ張っている。2曲目「シャッタード・イリュージョン」は、ホーンセクションが魅力的な都会的バラード風の曲。3曲目「ゴッド・セイヴス・ザ・エレファンツ」もゆったりした曲で、トーキング・ドラム風の音が面白い。4曲目はタイトル曲の「ゲット・アップ」だが、これはとてもポップで意欲的な曲だ。まるで体育大会の競技中に流れてきそうな駆け足リズムで、メロディーの作り方も、何か、こう、ある種強引な雰囲気もある、不思議な曲。実はこのポップ性は、セカンドアルバムに如実に現れてくることになるのだが。この曲には「サンダー・マンXanderMann」のボーカルがクレジットされているが、これは曲中に「きゃー」という嬌声と最後に笑い声が入っているもので、エド・マンの息子の声らしい。5曲目「バイ・チャンス」は、スローなリズムで、ややダルな感じの曲。ここでもベースのフレーズがとても粋で、ギターソロが印象的だ。ギターはアラン・ホールズワースを意識したプレイで、なかなかの雰囲気を出している。最後の6曲目「ファイナル・トーン」は10分7秒の大作。ひとつのドラマを感じさせるような雄大な曲だ。
1988年10月に録音されたと書かれている。このアルバムは1993年に発表されたもののようだ。このCDはジムコジャパンから発売された日本盤だ。プロモーション用の見本盤と書かれている。
2003.8.22