魅力的なギタリストはたくさんいる。例えばスティーブ・ヴァイは「ギターの芸術家」という感じで、知的にフレーズを組み立てて感動させてくれる。イングウェイ・マルムスティーンは「ギターの職人」だろうか。ストイックなイメージを感じる。そういう言い方をすれば、ポール・ギルバートは「永遠のギター小僧」と言っていいだろう。とにかくギターを弾くことが大好きだ、という喜びに満ちている。だから聴いていても気持ちいい。
ポール・ギルバートは決して早弾きに魅力があるのではない。聴き手の心をくすぐるフレージングに魅力があるのだ。フレットを走る指先や、ピックの動き、揺れるネックなどが目に見えるようだ。だがもちろん早弾きでも楽しませてくれる。一番の聴き所はやはりトラック7の「ヘビー・ディスコ・トリップ」だろうか。そしてトラック9の「ダウン・トゥ・メキシコ」を聴いてみろ。この強引なリフからは、強烈なロック魂を感じる。俺のやりたいのはこれだ。好きな奴だけが聴けばいい。これこそロックだ。この曲はギター教則ビデオ「インテンス・ロック」で例題曲となっていたものでもある。実はこのビデオも持っている。俺も真面目に練習したときもあったのだ。
そしてなんと言ってもトラック12の「ギター・コンチェルト作品第一番」は最高だ。7分48秒の大作で、バッハの「チェンバロ協奏曲」をポール・ギルバート風にアレンジしたものだ。素晴らしい。ただただ、恍惚と聴くしかない。
さらにCDに詳しい記載はないが、トラック13、14と2曲のボーナストラックが入っている。ライナーによればトラック14「バービー・バング・ユア・ヘッド」のドラムはポール・ギルバート自身によるものらしい。このアルバムは1998年に発表された。このCDは2000年にマーキュリー/ユニバーサル・ミュージックから発売された日本盤だ。
2003.8.20