Agents Of Fortune / BLUE OYSTER CULT


やはり1970年代のロックは面白い、という確信を新たにさせてくれたアルバムだ。このアルバムも学生時代に聴きたいと思いながら機会がなく、心の隅に引っかかっていたアルバムだったのだが、つい最近、中古CD店で手に入れたものだ。実に様々なタイプの楽曲が集められていて、アルバムの最初から最後まで飽きさせなかった。俺が思うに、本国アメリカでの評価はいざ知らず、日本では大きな評価を得られなかった理由の一つに、バンド名の持つ神秘性と、アルバムに収められた楽曲の多様性がミスマッチであったからではないだろうか。アルバムタイトルやジャケットもそうだ。また曲名も「死神」「懺悔」「吸血鬼」などという邦題が付けられ、いかにも神秘的なイメージが込められているが、楽曲から得られるイメージは、また違ったものだ。すこぶるシンプルでストレートな曲が多いのだ。

1曲目「サマー・オブ・ラブ」は、愛の頂点を歌った実にシンプルな曲だし、2曲目の「懺悔」と邦題を付けられた「トゥルー・コンフェッション」は「正直に愛し合おう」とでも訳したいくらいのストレートで、典型的なアメリカンロックだ。3曲目の「死神」、原題は「ドント・フィアー・ザ・リーパー」、これが、また、いい。とてもきれいなコーラスで、曲の構成もドラマチックなバラードだ。「死を恐れないで、一緒に飛ぼう」と、なにやら心中を想像させるストーリーだ。4曲目「E.T.I.」になって初めて「ヘビー・メタル」という形容詞に近い曲が出てくる。しかしそれでもアメリカンロックの明るい伝統を受け継いでいることを感じさせるのだ。

5曲目「ヴェラ・ジェミニの復讐」は、一見淑女である女性が、実は2つの顔を持っていたという歌。男の苦悩が歌われている。6曲目「罪深き恋」もロックバラードで、恋人への愛の気持ちを歌っている。7曲目「吸血鬼」は原題が「タトゥー・バンパイア」で、シンプルで歯切れのいいロックだ。8曲目「モーニング・ファイナル」も印象に残る曲だ。拳銃を持ち町で人を撃つ無差別殺人に関する曲で、アメリカでは1970年代に既に社会問題であったことを想起させる。この曲では被害者についてや問題提起をしているのではなく、むしろ加害者に対する共感を感じてしまうが、俺の考えすぎだろうか。9曲目「テンダロイン」もボーカルのメロディーが印象的で良い。最後の10曲目「デビー・デニス」アコースティック・ギターをフューチャーしていて、変拍子もあり、プログレッシブ・ロックとしての味わい深さもある。歌われているのはデビー・デニスという彼女と、ツアーに出る俺という関係を歌った愛についてだ。

ライナーによれば「ヘビーメタル」という言葉は、このブルー・オイスター・カルトから呼ばれたらしい。このアルバムは1976年に発表された。このCDはCBSソニーから発売された日本盤だ。

2003.8.19