Universal James / James Brown


井筒和幸監督、西田敏行主演の映画「ゲロッパ」が話題をよんでいる。ジェイムズ・ブラウンが歌の中で「GetUp!」と叫ぶのが「ゲロッパ」と聞こえることをタイトルにしたらしい。今日ここで紹介するアルバムにも、名曲「セックス・マシーン」の新テイクが収められているが、確かにジェイムズ・ブラウンは「ゲロッパ」と言っている。

ジェイムズ・ブラウンは、なんとも、とらえどころがないミュージシャンだ。「ミュージシャン」というよりも「芸人」という言葉の方がぴったりとくるイメージがある。このアルバムのタイトルも人を食ったようなものだ。邦題は「世界のジェイムズ」となっているが、ジャケットデザインは「宇宙のジェイムズ・ブラウン」というイメージだ。「全世界のジェイムズ・ブラウン」または「普遍的なジェイムズ・ブラウン」、最近の言葉でいえば「偏在するジェイムズ・ブラウン」といったところか。「どこでもジェイムズ・ブラウン」「誰にもジェイムズ・ブラウン」「みんなのジェイムズ・ブラウン」、とにかく存在感満点だ。足からロケット噴射をして宇宙を飛ぶミュージシャンは、そういない。そして、この、感極まった顔は最高だ。



俺もおぼろげながら覚えているのだが、日本ではカップヌードルのコマーシャルに出演したことがあるようだ。それは日清のカップヌードルで「味噌味」が出たときのコマーシャルらしく、「ミソンバ!」と歌っていたことを覚えている友人がいる。だが日本ではミュージシャンとしては必ずしも有名だとは言えないだろう。しかし1956年に「ジェイムズ・ブラウン・アンド・フェイマス・フレイムス」の名前でデビューしたそうなので、今年でミュージシャン歴47年となる。アメリカでは「ファンクのゴッドファーザー」と呼ばれ、ライブや編集盤をあわせると100枚以上のアルバムが出ているらしい。そして今でも現役ミュージシャンだ。

実を言えば、俺はファンクやソウルをあまり聴かないのだ。だからこのアルバムが一般的な評価として良いのか悪いのか、正直いってよくわからない。1曲目「キャント・ゲット・エニイ・ハーダー」で、あたかもコンサートの幕開けといった様相を呈する。ラップ風の曲だ。2曲目はソウルフルな「ジャスト・ドゥ・イット」、「ビートをつかんでリズムに乗って、とにかく、やってみろ」という歌だ。3曲目の「マイン・オール・マイン」はスピード感がある。「俺のもの、俺のもの、すべては俺のもの」という自意識過剰の、いかにもこれがジェイムズ・ブラウンなのだろう。この曲でも「ゲロッパ」と言っているぞ。4曲目「ウォッチ・ミー」はゆったりしたリズムで、ジェイムズ・ブラウンの呪術的なパワーを感じる。そして5曲目、爽やかなブルースで「ジョージア・ライナ」だ。この曲はすごくいいのだが、「ジョージアで育ったんだ。でも生まれはカロライナ。だからジョージアライナなんだ」と歌うのだが、なんだか冗談くさい。だが実際ジェイムズ・ブラウンはカロライナ州生まれだということだから、自伝的な歌でもあるのだろう。

6曲目「ショー・ミー・ユア・フレンズ」はよき友を歌ったもの。7曲目「エヴリバディーズ・ガット・ア・サング」はギターのカッティングがかっこいいファンキーな曲。8曲目「ハウ・ロング」は、ややシリアスな内容を持っていて、社会の様々な問題がいつまで続くのだろうと憂いている。9曲目「メイク・イット・ファンキー2000」は前曲のシリアス・トーンから打って変わって「ファンキーにやろうぜ」という曲。そして10曲目「モーメンツ」は再びシリアスな内容で、詩の朗読のようなトラックだ。そして最後の11トラックは日本盤だけのボーナストラックで「セックス・マシーン」の新テイクだ。日本向けに作られたもののようで、「アリガトウ」という言葉が歌詞に盛り込まれている。もちろん「ゲロッパ」も十分楽しめる。

このアルバムは1993年に発表された。このCDはポニーキャニオンから発売された日本版だ。

2003.8.16