まるでクルト・ワイルの世界のようなドラマチックな曲が流れてきて、ブルースフィーリングにあふれた前作との違いに驚く。しかも型にはまらないアグレッシブなギターは、俺の大好きな音だ。実はこの曲でギターを弾いているのは、マーク・リボットMarcRibotとクリス・スペディングChrisSpeddingである。トム・ウェイツのボーカルはさらに渋みを増している。まるでキャプテン・ビーフハートのような「だみ声」だ。
2曲目もエスニックなパーカッションが印象的なアバンギャルドな曲だ。うめくようなボーカルが重々しい。3曲目から5曲目にかけて、再び戯曲的な世界の曲に戻る。6曲目はブルースだが、うめくようなボーカルが重苦しい。7曲目を終えて、突然晴れやかなサウンドが広がる。8曲目の「ハング・ダウン・ユア・ヘッド」だ。カントリー・ブルース調の曲で、コーラス部分が印象的だ。町を歩いていて、ふと、口ずさんでしまいそうだ。そして9曲目「タイム」は、さらに味わい深いスローなバラードだ。次の10曲目はバンドネオンが伴奏のテーマ曲「レイン・ドッグズ」だが、3分弱の短い曲で、ファードアウトしながら消えるように終わる。ここまでが、いわばアルバム前半部分といえよう。
11曲目はまるでスパイ映画のテーマソングのような元気のいいインストルメンタル曲。そしてモノローグのような12曲目をはさみ、バンジョーとパーカッション、ベースのトリオによるブルース、ごきげんなロカビリー風ロックン・ロールなど、曲調の様々な曲が集められている。
参加ミュージシャンは豪華な顔ぶれだ。ギターのマーク・リボットがトラック1,2,3,4,7,8,10に参加、キース・リチャーズがトラック6,14,15に参加、クリス・スペディングがトラック1に参加している。またジョン・ルーリーがトラック16にアルトサックスで参加、トニー・レヴィンがトラック17にベースで参加している。
このアルバムは1985年に発表された。このCDはポリグラムから発売された日本盤だ。
2003.7.15