いくら「気まぐれ更新」といっても、1年も書いていないと忘れられても仕方がない。どのくらいの人がこのページを見にきてくれるかと思いながら、今、書いている。しかしこの間も音楽を忘れてしまった訳ではない。むしろ、今まで気がつかなかった多くの音楽に出会い、感動することばかりの毎日だった。70年代、80年代には、まだまだ一般には知られていない素晴らしい音楽がある。そしてレコードからCDの時代になって、それらの音楽が手に入れやすくなったことは大変うれしいことだ。だから俺はこうして音楽を紹介する。少しでも多くの人に気づいて欲しいために。
そして、トム・ウェイツだ。正直に言えば、このアルバムは最初、近所のレンタルCD店で借りて聞いた。気にはなっていながら、CDショップには売っていない。雑誌などから得られる情報も少ないので、たまたま近所の店でみかけたとき、とりあえず借りて聞いてみようという気になった。そして、これが、実によかった。おかげで俺はトム・ウェイツのアルバムを探しまわる日々に襲われた。もちろん、このアルバムも、後日手に入れた。
まず、声が、いい。「枯れた声」と一言で言っていいと思うが、なんとも味があるのだ。目をつぶって聴いていると、まぶたの裏に酒場のスタンドが浮かび上がってくる。酒。ブルース。煙草の煙。決して健康的ではない。だが「人生、まあ、こんなもの」といった達観は、この慌ただしく尻を突かれるような時代にあって、もしかしたら本当は必要な気持ちなのかも知れない。
トム・ウェイツは1949年カリフォルニア生まれ。ファーストアルバムの「クロージング・タイム」は1973年発表で、このアルバムはセカンドアルバムだが、1974年発表だ。まるで人生のすべてを見透かすような存在感だが、このとき彼は弱冠25歳だったということにも驚く。このCDはワーナーから発売された日本盤だ。トム・ウェイツはこれからどんどん紹介するので、楽しみにしていてくれ。
2003.7.14