実は最近、通勤のときにこれを聴いている。スコーピオンズの「イン・トランス」とともに俺をロックの虜にしてくれた因縁のアルバムだ。アルバムの冒頭「ハイウェイ・スター」のイントロが聴こえてくると、体中の血液がふつふつと沸き立つ気持ちになってくる。おそらく俺は爺さんになっても、このアルバムを聴くたびに熱く興奮するのだろう。
中学から高校生の頃に聴きまくったアルバムのほとんどがそうだったのだが、少ない小遣いの中で自分でアルバムを買ったことはほとんどない。このアルバムも聴きまくった割にはレコードでは持っていないもののひとつで、最近になってCDを手に入れたものだ。
この年になってあらためて聴き込んでいくと、いろいろなことに気がつく。まず、ディープ・パープルというバンドの革新性だ。「ハイウェイ・スター」や「スモーク・オン・ザ・ウォーター」といったヒット曲の印象が強いので、楽曲としての様式美に着目されがちだが、「チャイルド・イン・タイム」の長いソロにはジャズ・ロック的な即興演奏の面白さが十分味わえるし、「ミュール」のドラム・ソロにしても「ストレンジ・カインド・オブ・ウーマン」でのリッチー・ブラックモアのギターとイアン・ギランのヴォーカルによる掛け合い、「レイジー」のジョン・ロードによるオルガン・ソロ、とギターの絡み、「スペース・トラッキン」の後半部分のアレンジなど、プログレッシブ・ロックにも通じるような斬新さがある。ディープ・パープルのインタープレイの素晴らしさは、もっと着目されていいはずだ。そして何よりも、どの曲においてもイアン・ペイスのドラムとロジャー・グローバーのベースによるリズムセクションの強力さは比類なきものだ。どちらかといえばリッチー・ブラックモア、イアン・ギラン、ジョン・ロードというスタープレイヤーに目がいきがちだが、この迫力あるリズムの支えがあってこそ、これらの名曲と名演奏が可能になったのだ。まさに、バンドとして最も充実した連中の姿が、ここに、ある。
とはいえ、結局のところディープ・パープルは青春時代に俺を狂わせた張本人であり、これから先もずっと俺を虜にし続けるだろう。このアルバムは1972年に発表された。このCDは「フォーエバー・ヤング・シリーズ」と題されてワーナー・ミュージック・ジャパンから発売された日本盤だ。
2002.7.18