Couldn’t Stand The Weather / Stevie Ray Vaughan And DOUBLE TROUBLE


このアルバムはスティーヴィー・レイ・ヴォーン・アンド・ダブル・トラブルのセカンドアルバムだ。ファーストアルバムがあまりにもきらめくようなサウンドで満ちているので、このアルバムは地味な印象を受けるかもしれない。しかしなかなかに味わい深い作品であることは疑いない。

このアルバムで最も印象深いのは、ジミ・ヘンドリックスの名曲をカバーした4曲目の「ヴードゥー・チャイル」とJ・リードの作品「ティン・パン・アレイ」だろう。いずれも8分、9分という大作である。ジミ・ヘンドリックスは気になるギタリストであったようで、「ソウル・トゥ・ソウル」の日本盤CDにジミ・ヘンドリックスについて語るスティーヴィー・レイ・ヴォーンのインタビューが収められているし、ジミ・ヘンドリックスに新しいコード進行を教えてもらう夢を見た、という彼の発言もある。ここでの演奏も、ほぼオリジナルに沿ったイメージの演奏がなされている。「ティン・パン・アレイ」は哀愁がにじみ出るブルースだ。貧しい人々への共感が痛いほど伝わってくる。

このアルバムのもう一つの特徴は「テキサス・ブルース」を意識的に排した曲が収められているところにある。2曲目のタイトル曲「テキサス・ハリケーン」はオリジナルで、恐らくエリック・クラプトンに影響を受けたであろう、クリーム風のブルース・ロックである。3曲目、E・ジョーンズの「ザ・シングズ・アイ・ユース・トゥ・ドゥ」も同傾向の曲といえよう。そして最後の8曲目「スタングズ・スワング」はジャズ風の曲。

言い忘れたが、1曲目の「スカットル・バッティン」は、まさに彼以外には成し得ないであろう弾丸炸裂のギターワークが展開する名曲だ。アルバム冒頭からノックアウトされること間違いなし。7曲目「ハニー・ビー」も同様のテキサス・ブルースらしさにあふれる曲。つまり、このアルバムはスティーヴィー・レイ・ヴォーンらしさの中に、新しい音楽の表現を取り入れたバラエティ豊かな作品といえる。このアルバムは1986年に発表された。このCDは1997年にEpicSonyRecordsから「Super1600NicePrice」として廉価で発売された日本盤だ。

2002.7.17