Texas Flood / Stevie Ray Vaughan And DOUBLE TROUBLE


スティーヴィー・レイ・ヴォーンは1954年10月、テキサス州に生まれた。1975年頃、オースティンで活動する「ポール・レイ&ザ・コブラズ」に在籍した後、自らのバンド「トリプル・スレット」そして「ダブル・トラブル」を率いて活躍した。1983年にはデヴィッド・ボウイのアルバム「レッツ・ダンス」でギターを弾き、世界的にその名を知られるようになった。しかしデビッド・ボウイのグループで活動するよりも、自らのバンドを大切にしたいという気持ちから、「ダブル・トラブル」に専念することとなる。ファーストアルバム「テキサス・フラッド(邦題:テキサス・フラッド〜ブルースの洪水)」、セカンドアルバム「クドゥント・スタンド・ザ・ウエザー(邦題:テキサス・ハリケーン)」、サードアルバム「ソウル・トゥ・ソウル」と順調にアルバムを発表。1986年にはライブアルバム「ライヴ・アライヴ」を発表した。そして1989年にはフォースアルバム「イン・ステップ」を発表するが、この年、エリック・クラプトンとの共演コンサートを終えて移動のために乗ったヘリコプターが墜落し、この世を去ることとなった。1990年8月27日、35歳の若さであった。

生まれ故郷のテキサス州ダラスには「ローランド・メモリアル・パーク」に彼の墓がある。それは半径5mほどの大きなもので、左上側には彼の父親も共に眠っているそうだ。夏はスプリンクラーで周囲の草花や芝生に水がまかれているといい、今も故郷の人々に愛されていることがうかがわれる。

このファーストアルバムからは、音楽に対する彼のあふれるような思いが伝わってくる。これでもか、これでもか、と命を込めてギターに向き合う姿、それは「好き」だからとか「愛している」からだという程度ではなく、「ギターと格闘する」という言葉でしか表しえない真剣勝負の姿だ。

最初このアルバムを聴いたとき、あまりに「饒舌」な彼のギターに驚き、受け入れるまでに時間がかかった。とにかく弾きまくり、一瞬の隙間も許さない、というプレイに思えたからだ。だが何度も繰り返し聴いていくと、彼のリズム感、というか時間感覚のようなものがわかってきた。鳴り続いているように思えるフレーズの中にも、実に繊細な音の使い分けがあるのだ。

オリジナルのアルバムは、いかにも彼らしい軽快な「ラヴ・ストラック・ベイビー」で始まり「レニー」で締めくくられる10曲だが、このCDにはボーナス曲が4曲と彼のインタビューが含まれている。ボーナストラックはセカンドアルバムに収録されることになる「ティン・パン・アレイ」の未発表テイクと、「ティスティファイ」「メアリー・ハッド・リトル・ラム」「ワム」のライブ収録だ。

スティーヴィー・レイ・ヴォーンを聴くにはやはりこのアルバムからだと思うが、先に述べたとおり、このアルバムの良さを感じることができるようになるまでは、少々時間がかかるかも知れない。ちょっと聴いただけではわからない奥深さがある音楽なのだ。このアルバムは1983年に発表された。このCDはエピックソニーから1999年に発売された日本盤のCDだ。

2002.7.16