We’re Only In It For The Money ・ Lumpy Gravy / The Mothers Of Invention


フランク・ザッパ、正確にはマザーズ・オブ・インヴェンションのサードアルバム「ウィアー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マネー(邦題は「俺たちは金のためだけにやっているんだ」)だ。このアルバムのことを知らない人はジャケットを見て「おや」と思うに違いない。そう、このジャケットはビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」にそっくりだ。

実は、ビートルズはフランク・ザッパのセカンドアルバム「アブソリュートリー・フリー」を真似て「ザージェント・ペパーズ」を作ったという話がある。そのことにザッパ側は怒ってサードアルバムのジャケットをビートルズのパロディにし、アルバムタイトルを皮肉なものにしたという。事の真偽はどうなのだろうか。

「アブソリュートリー・フリー」の発売は1967年5月、「サージェント・ペパーズ」の英国発売は1967年6月なので、この事実からはビートルズがザッパのアルバムを聴いて「サージェント・ペパーズ」を作ったとは考えにくい。しかし実は「アブソリュートリー・フリー」は発売の4ヶ月前には完成していたとの話がある。

雑誌「レコード・コレクターズ」1991年9月号で湯浅学氏は「66年12月末にはほぼ作業は完了していたという。が、歌詞を添付する段になって、MGM上層部からストップがかかり、もめたためリリースは67年5月となる。」という事実から「ビートルズは、リリース以前(歌詞問題で紛糾中)に『アブソリュートリー・フリー』の音を手に入れた。それが『サージェント・ペパーズ』の大いなるヒントとなっている、と言われる」と述べている。

「サージェント・ペパーズ」のレコーディングには700時間という膨大な時間がかかったらしい。もしビートルズがレコーディング中にザッパのアルバムを聴いたとしたら、アレンジを変更して作り変えたということも考えられる。だが音楽というものは新しい試みが絶えず影響を与えながら進化していくものであろうし、たとえアイデアを真似たとしても「サージェント・ペパーズ」の価値が変わるものではないだろう。また同じ時代に全く別のミュージシャンから偶然に同じコンセプトが生み出されることも在り得ることだ。結局のところ、ビートルズもサッパもロック史に残る作品を残したことは事実であるし、ザッパもやりたいようにやった訳だ。

ただしこのアルバムが最初に発売されたときは、レコード会社がトラブルを恐れて、この写真は表ジャケットに使われず、別のジャケットであったらしい。このジャケットは1986年に発売されたライコディスク盤特有のもののようだ。歌詞も検閲以前のヴァージョンであるらしいのだが、英語の苦手な俺には詳しいことはわからない。

「フリーク・アウト」「アブソリュートリー・フリー」そしてこの「ウィアー・オンリー・イン・イット・フォー・ザ・マネー」は、フランク・ザッパの原点ともいえるアルバムだ。このアルバムを楽しめるようになれば、本物のロック通と言っていいぞ。このアルバムは1968年に発表された。このCDは1986年にRYKODISCから「LumpyGravy」とカップリングされて発売されたカナダ盤だ。

2002.7.13