Dub Housing / PERE UBU


「俺達のやってることをちゃんと理解出来る奴は100人もいない」とのデヴィッド・トーマスの言葉が、音楽之友社「ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・プログレッシヴ・ロック」に紹介されている。この本に書かれている東瀬戸氏によれば、ペレ・ユビュは「巨体の高踏異能インテリ、デヴィッド・トーマスを中心に米工業都市クリーヴランドで75年に結成され、様々な遍歴(クリス・カトラーやメイヨ・トンプソンが在籍した時期もある)を重ねながら、現在も生き長らえるアヴァン・ガレージ王」ということだ。クリス・カトラーはヘンリー・カウのメンバーとして有名なミュージシャン、メイヨ・トンプソンはレッド・クレイオラのリーダー。このアルバムはペレ・ユビュのセカンドアルバムだ。

このアルバムにクレジットされているメンバーは、ファーストアルバムと同じ、トム・ハーマンTomHerman、スコット・クラウスScottKrauss、トニー・メイモンTonyMaimone、デヴィッド・トーマスDavidThomas、アレン・ラヴェンスタインAllenRavenstineの5人。基本的に前作のサウンドを引き継いでいるが、ストレートな攻撃性は薄れ、よりブラックなユーモアを感じる作りになっている。パンク・ニューウェーブになじみがなく、初めてペレ・ユビュを聴く人にとっては、このセカンドアルバムの方が聴きやすいかもしれない。

1曲目「Navvy」はペレ・ユビュらしいネジレたダンスミュージックで、デヴィッド・トーマスのボーカルがいかにも彼らしい。2曲目「OnTheSurface」は、ピコピコした電子音のメロディーが印象的でユーモラスな曲。3曲目はタイトル曲の「DubHousing」で、自由奔放に吹きまくるサックスが都会的な哀愁を感じさせ、ドラマチックな展開に盛り上ってゆく。4曲目は「Caligari’sMirror」というタイトルだ。「カリガリ」といえば、ロベルト・ヴィーネ監督のドイツ映画「カリガリ博士」を連想するが、スライド・ギターかボトルネック奏法のギターソロがホラーな感じを出している。5曲目のアバンギャルドでサウンドコラージュ的な「Thriller!」でもスライド・ギターのような音が多用され、摩訶不思議なイメージを出している。ぐじゃぐじゃと潰れた音が耳を覆い尽くしながらA面を終える。

アナログレコードB面へ移りトップの曲、6曲目は歯切れよくグルーヴ感のある「I,WillWait」。ベースとギターのユニゾンが心地よい。7曲目「DrinkingWineSpodyody」は、いかにも酔いどれた雰囲気のけだるい曲。だらだらした感じがおもしろい。8曲目「(Pa)UbuDanceParty」は、明るいギターとコーラスがビーチ・サウンドのように爽快だが、ざわざわとしたノイズ音とホンキー・トンクなピアノが重なり、素っ頓狂なボーカルはブラックユーモアを感じさせる。曲の最後は異様にエキサイトし、盛り上っていくところが、いい。9曲目「BlowDaddy−o」はアナログ的に変調されたノイズが曲全体のイメージを作り、他のメンバーはフリーにインプロビゼーションを紡いでいくインストルメンタル曲。ギターは堰を切るかのように自由奔放に唸りを上げて凄まじい。そして最後の10曲目「Codex」では、デビッド・トーマスが「あーい・しんかばう・ちゅー・おーるざたーいむ」と呪いのような声で歌う。不気味な歌だが一度きいたら耳から離れない。

このアルバムはオハイオ州PainesvilleのSumaStudiosで1978年の8月から9月に録音されたものだ。ただし「Thriller!」の一部はDiscohomeStudioで録音されたとある。ペレ・ユビュの代表作として有名なセカンド・アルバムで、1978年にChrysalisRecordsLtdから発売された英盤のアナログレコードだ。


2001.10.2