俺はマイケル・ローズのファンなのだが、リアルタイムに追いかけてはいない。とりわけブラック・ウフルーを脱退してからは情報が少ないこともあって、正直いって関心を失いつつあった。このアルバムはブラック・ウフルー脱退後のファースト・ソロアルバムなのだが、俺が聴いたのはごく最近のことだ。当時はアルバム「賛歌/アンセム」の評判でグラミー賞を得たり、それなりにボーカリストとしての彼の評価は高く、注目されていたようだ。つまり多くの期待の中でこのアルバムは制作され発表されたことになる。
このような背景の中で作られたこのアルバムは、CDの帯に「ソウル・トゥ・ソウルのプログラマー屋敷豪太をプロデューサーに迎え、レゲエを昇華させた最もコンテンポラリーなビートを生み出した」とあるように、たいへんポップな作りになっている。だが屋敷豪太のプロデュースはトラック3,4,5,9,10,11、そしてボーナストラックの14と、およそ半分であり、トラック1,2,6はバイロン・バードByronByrd、トラック7,8,13はノエル・ブラウンNoelBrownとマイケル・ローズ、トラック12はマイケル・ローズ自身によるものだ。
1曲目はポール・サイモンのヒット曲「母と子の絆」のカバー。ここでは男性ボーカルのラップが加えられている。2曲目の「ホット・ポップ」でも女性ボーカルが加えられて、都会的なブラック・コンテンポラリーといった風だ。3曲目の「バズ・ユー」は比較的マイケル・ローズの「アク」が感じられる。4曲目「プロミスト・ランド」はアップテンポの軽快な曲。そして続く5曲目「リッチー・ザ・リッチ」はアルバム前半で一番の聴き所。金持ちが幸せとは限らない、というような歌だ。マイケル・ローズの声が心の底から訴えかけてくる。6曲目「アイズ」はバラード。静かに聴かせてアルバム前半を終える。
7曲目「デモンストレイション」はマイケル・ローズのボーカルを堪能できるドラマチックな曲。そして8曲目「インヴェイション」ではブラック・ウフルー時代のようなストレートな歌い方で、ゆったりしたリズムのレゲエを聴かせてくれる。彼独特の節回しが随所でみられ、ファンには懐かしいような嬉しい気分になる。9曲目「ジャスト・ドゥ・イット」はアフリカンリズムの曲だが、ここにはフェラ・クティFelaKutiがゲストでテナー・サックスを吹いている。
聴き所は1曲目の「レット・アス・プレイ」、ジュニア・リードの伸びやかな歌いぶりが素晴らしい2曲目「ドレッド・イン・ザ・マウンテン」、タイトル曲の3曲目「ブルータル」、早まわしの歌いぶりが印象的な5曲目「フィット・ユー・ハフェ・フィット」、シングルカットされた6曲目「グレイト・トレイン・ロバリー」といったところか。スカ風のアレンジを取り入れた9曲目「レゲエ・ウィズ・ユー」もいい。
このアルバムは1986年に発表された。これはRasRecordInc./日本コロムビア株式会社から発売された日本盤のアナログレコードだ。
2001.9.12