Anthem / BLACK UHURU


「ゲス・フーズ・カミン・トゥ・ディナー」または「ショウ・ケース」と呼ばれるファースト・アルバム、セカンドアルバム「シンセミラ」、サードアルバムである名作「レッド」、そして「チル・アウト」と進化し続け、この「アンセム」でブラック・ウフルーは頂点を極めた。邦題を「賛歌」と付けられたこのアルバムは、生きることを、自由を、勇気を称えるマイケル・ローズの歌に神々しささえ覚え、涙があふれてくる。ジャマイカ訛りの発音とスラング。誇りを持った奴らの自信に満ちたメッセージ。音楽の持つ途方もないエネルギーが、ここに、ある。

マイケル・ローズのボーカルも、ますます磨きがかかっている。独特の淡々とした歌い方は鬼気迫るものとなり、熱せられた石のように断固とした気迫を感じさせる。このアルバムの迫力を高めているのは、ゆったりとした大地のうねりを感じさせるリズムだ。そしてスライ・ダンバーのドラムは、エレクトリック・ドラムを使い、ズンズンと腹の底に響くダイナミックな音作りで迫ってくる。

スライ・ダンバーの一撃でアルバムは幕をあける。印象的なコーラスの1曲目は「ファット・イズ・ライフ」。2曲目「ソリダリティ」はコーラスが効果的に使われ、ポップな仕上がりになっている。3曲目はタイトル曲「ブラック・ウフルー・アンセム」。これぞまさにブラック・ウフルーらしい魅力満点の曲だ。これほどまでに感動的なレゲエが他にあるだろうか。そしてA面最後の4曲目は「トライ・イット」。ブラスをふんだんに使い、ブラック・コンテンポラリー的な要素を加えながら、あくまでもへヴィーなサウンド。エレクトリック・ドラムが縦横無尽に炸裂する。

B面はスクラッチを曲に盛り込んだ「ボタニカル・ルーツ」で始まる。そして「サムバディズ・ウォッチング・ユー」はアルバム中で最も聴きやすい曲かも知れない。ブラック・ウフルーにしては珍しく、ボーカルを含めて全体的にエフェクトが強くかけられ、ポップな仕上げになっている。続く「ブル・イン・ザ・ペン」、そしてバラード風の「エレメンツ」でアルバムは幕を閉じる。

アルバム解説の会田裕之氏によると、このアルバムは一度レコーディングされたものが、サウンド処理を変更されるとともに一曲を差し替えられて再発表されたものらしい。オリジナル・レコーディングされたものは英国で発売されたとのことだから、機会があれば聴き比べてみたい気がする。ピュアなサウンドも、このアルバムにおける大胆できらびやかなサウンドとまた別な意味で、ブラック・ウフルーらしく、きっと素晴らしいに違いない。

このアルバムは1984年に発表された。これはアイランド/株式会社ポリスターから発売された日本盤のアナログレコードだ。


2001.9.11