ブラック・ウフルーのファーストアルバムは、スライ・アンド・ロビーのレコーディングスケジュールの隙間に偶然のようにレコーディングされた、というような記述がレコードのライナーに書かれていた。事の真偽は定かではないが、ある種ダブ・サウンド的な平坦な演奏は聞きようによっては投げやりであり、何個所かはミスタッチと思えるコードに合わないオルガンの音があったりする。確かに雑な作りといえるかも知れない。それが結果的にマイケル・ローズの個性を際立たせることになったといえるのだが。
このアルバムはブラック・ウフルーのセカンドアルバムだ。ファーストアルバム同様サウンドはスライ・アンド・ロビーが手がけていて、プロデュースもスライ・アンド・ロビーの名義だ。ここではファーストアルバムのような粗削り、というか投げやりなものではなく、曲としてきちんと作り込まれたものになっている。
1曲目はダブ風リズムのスローな「ハピネス」。そして俺の大好きなアップテンポの「ワールド・イズ・アフリカ」が2曲目に続く。電子音がピコピコ鳴り、シンセドラムもピューンと軽い音なのだが、ディープな雰囲気に思えるところは不思議だ。3曲目「プッシュ・プッシュ」、4曲目「ゼア・イズ・ファイヤ」とゆったりとしたリズムの曲が続く。スローテンポのダルな雰囲気は、いかにもブラック・ウフルーらしい。
B面はまずレゲエらしからぬ印象的なピアノで始まる「ノー・ローフィング」、そしてタイトル曲の「シンセミラ」は、マイケル・ローズの粘りのある歌い方がぴったりの曲。「エンデュランス」は典型的なレゲエの雰囲気で始まるが、ボーカルが入った途端にマイケル・ローズ色に染まってくる。「バンパイア」は明るい曲調だが、随所にマイケル・ローズの節回しが現れる。考え様によってはマンネリなのだが、これが俺には心地よいのだから仕方ない。
レゲエ・ミュージックの中でもブラック・ウフルーの個性は、スライ・アンド・ロビーによるダブ風の執拗なリズムと、マイケル・ローズの呪術的ボーカルのぶつかりあいによって奇跡的に生まれたと言えよう。メンバーはスライ・ダンバーSlyDunbar(1980,Syndromes,Percussion,Drums)、ロビー・シェイクスピアRobbieShakespeare(Bass)、Rad”Duggie”Bryan(LeadGuitar)、”Ranchie”Mclean(RhythmGuitar)、AnsellCollins(AcousticPiano,Organ)、”Sticky”Thompson、JimmyBecker(Harmonica)。ブラック・ウフルーはマイケル・ローズMichaelRose、ピューマ・ジョーンズPumaJones、ダッキー・シンプソンはデリック・シンプソンDerrickSimpsonと書かれている。
このアルバムは1980年に発表された。これはMango/IslandRecords,Inc.から発売された米盤のアナログレコードだ。
2001.9.9