いきなり脳髄に電極を差し込まれたように痺れさせてくれるタイトル曲「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」で幕をあける。この心地よさを存分に味わうには、ヘッドフォンで外界をシャットアウトし、大音量で脳を揺さぶるのがいい。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのセカンドアルバムの始まりだ。
したい放題に作ったという印象のアルバムだ。おそらくファーストアルバムでアンディ・ウォーホールのプロデュースの下、窮屈な思いがあったに違いない。このアルバムでは型にとらわれない自由な発想で作り上げられた曲が詰まっている。このアルバムを作り上げたのは、ルー・リードLouReed(Vocal,Guitar,Piano)、ジョン・ケイルJohnCale(Vocal,ElectricViola,Organ,BassGuitar)、スターリング・モリソンSterlingMorrison(Vocal,Guitar,BassGuitar)、モーリーン・タッカーMaureenTucker(Percussion)の4人、プロデュースはTomWilsonだ。
2曲目の「ザ・ギフトTheGift」は8:16もの長さにわたり、右トラックからのみ聞こえてくるジャム風の演奏に、左トラックからは物語風の淡々とした詩の朗読。だが詩の内容は凄まじい。3曲目「レディ・ゴダイヴァズ・オペレイションLadyGodiva’sOperation」はコード展開を感じさせない、全体的にのっぺりとした不思議な浮遊感のある曲。エフェクトのないオン・マイクの生々しいボーカルが、最初は柔らかい雰囲気を感じさせるが、次第に右に左にパンしながら、演奏もアバンギャルドにねじれていく。
4曲目「ヒア・シー・カムズ・ナウHereSheComesNow」は、ナンセンスな言葉の繰り返しが印象的な小曲。5曲目「アイ・ハー・コール・マイ・ネームIHeardHerCallMyName」はアルバム中最もスピードがあり、ハードな演奏が楽しめる曲だ。この強引なリード・ギターは、後のパンク・バンドの模倣するところとなったに違いない。
そして最後は17:27の大作「シスター・レイSysterRay」だ。この凄まじい音の洪水に身を委ねていると、演奏技術や音楽理論などという言葉の無力さを感じざるを得ない。そして技術にも理論にも裏付けられたものではないが、ここには野獣のような感性で身に付けられたインタープレイがある。バンドとしての一体感の中で、まるでオーネット・コールマンのハーモロディック・ミュージックのようなメンバー相互の交感がある。
全6曲を聴きおわると、ぐったりと疲れ果てるような重厚なアルバムだ。どの曲も自由奔放な演奏のように思えるが、実は全体として十分練られ作り込まれた完成度の高いアルバムだ。このアルバムがヴェルヴェット・アンダーグラウンドの最高傑作と言い切ってもいいだろう。
このアルバムは1968年に発表された。このCDはポリドール株式会社/ポリグラム株式会社から「ナイス・プライス1800」として1996年に販売された日本盤だ。解説はファーストアルバムに続いて大鷹俊一氏により書かれている。デジタル・リマスターされたもののようだ。
2001.8.7