The Velvet Underground / THE VELVET UNDERGROUND


アルバムタイトルは「ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」だが一般には「3」という名称で通っているようだ。ジョン・ケイルが脱退し、バンドのすべてをコントロールできる状態に立ったルー・リードが自らの決意を表したかのようなタイトルの付け方だ。内容的にもファースト、セカンドとは一味違う作りになっている。

アバンギャルドに歪んだ展開は見られず、楽曲として落ち着いた味わい深いものが集められている。これはもはや違うバンドの作品と言ってもいいだろう。メンバーは脱退したジョン・ケイルに代わりダグ・ユールが参加。ルー・リードLouReed(LeadVocals,Guitar,BackingVocals)、スターリング・モリソンSterlingMorrison(Vocals,Guitar,Co−vocalOn「TheMurderMystery」)、ダグ・ユールDougYule(Bass,Organ,BackingVocals,LeadVocalOn「CandySays」,Co−vocalOn「TheMurderMystery」)、モーリーン・タッカーMaureenTucker(Percussion,LeadVocalOn「AfterHours」,Co−vocalOn「TheMurderMystery」)の4人で、プロデュースとアレンジはバンド名義となっている。しかし全ての曲はルー・リードの作曲とクレジットされており、実質的にルー・リードのバンドとなった中で、ヴォーカルを各メンバーにとらせるなど、なんとかしてバンドとしての一体感を出そうとする苦労が感じられる。

バンドとしてのインタープレイは見られないものの、ヴォーカルをダグ・ユールがとった1曲目の「キャンディ・セッズCandySays」もいい曲だし、4曲目「ペイル・ブルー・アイズPaleBlueEyes」や5曲目「ジーザスJesus」など心を打つ作品がある。6、7、8とポップな曲が続いた後の7曲目「殺人ミステリーTheMurderMystery」は、右と左のトラックに別々の朗読を展開する物語風の詩で、セカンドアルバムにあった「ザ・ギフト」のアイデアを発展させたものだ。唯一この曲の後半でアバンギャルドに展開する場面があるが、残念ながら迫力はなく、こじんまりとまとまってしまっている。

アルバムの最後を飾るのは、ヴォーカルをモーリーン・タッカーがとった「アフター・アワーズAfterHours」だ。まるで少女のような清潔さを感じるヴォーカルは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド唯一の清涼感を感じる曲だ。解説によると「嫌がるモーリーン・タッカーに無理やりソロをとらせ」たとあるが、確かに決して上手いとは言えない歌だが、この清々しさはファンにとってたまらない贈り物であったに違いない。

このアルバムは1969年に発表された。このCDはポリドール株式会社/ポリグラム株式会社から「ナイス・プライス1800」として1996年に販売された日本盤だ。デジタル・リマスターされたものだとある。解説は大鷹俊一氏。


2001.8.8