Chelsea Girl / Nico


ニコは1988年7月に他界した。伝説のグループ「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」のファーストアルバムで独特の雰囲気を醸し出していたニコNico。これはニコが1967年に発表したファーストアルバムだ。

アンディ・ウォーホールのプロデュース、そして彼自身によるバナナのジャケットで有名なヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファーストアルバムは、彼らの代表作として語られることが多い。もちろんアルバムとして絶妙の完成度にあることは否定できないが、私にはミュージシャンの個性が押し殺された作りに思えてならない。ただニコのボーカルだけは、ゆるぎない自信を持って存在感が迫ってくる。俺にとってヴェルヴェットの最高作はセカンドアルバムの「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」だ。

しかしヴェルヴェットのファーストアルバムにおいて、ニコがボーカルを取っている曲だけは、アルバム全体の中で精彩を放ち浮き上がっている。レコード・コレクターズ増刊「アメリカン・ロックVol.3」によると、バンドとニコの関係は必ずしも良くはなかったということだ。「パリでの売れっ子モデル仕事に疑問を感じた彼女はロンドンでアーティスト活動を目指し、親交を得たストーンズらの縁もあってアンドルー・ルーグ・オールダムのイミディエイト・レコードからシングルを発表する。さらに本格的な役者修行を目指してニューヨークに移った彼女は、友人だったブライアン・ジョーンズやボブ・ディランらの縁からウォーホル周辺に出入りするようになり、結局ヴェルヴェッツに参加することになる。しかしウォーホルの仕掛けたものだけにバンドとの折合いは悪く、ファースト・アルバムを作ったところで抜けて発表したのが「ChelseaGirl」だった」と大鷹俊一氏が書いている。

このアルバムは、アコースティック・ギターやストリングスなど押さえたバック・サウンドに、オン・マイクで録られた生々しいニコのボーカルが楽しめる。ヴェルヴェットのファーストアルバムでニコの歌に魅入られたなら、きっと気に入ってもらえる。アルバムに収められた曲は、ジョン・ケイルJohnCale、ルー・リードLouReed、スターリング・モリソンSterlingMorrisonらのベルベット仲間によるものに加えて、ボブ・ディランBobDylanやジャクソン・ブラウンJacksonBrowneによる曲もある。アルバム中で最も長い8分02秒の5曲目「イット・ワズ・ア・プレジャー・ゼン」はニコとジョン・ケイル、スターリング・モリソンらの共作だ。この曲もいいが、6曲目のタイトル曲「チェルシー・ガール」も最高だ。これはルー・リードとスターリング・モリソンの共作になっている。9曲目の「ラップ・ユア・トラブルズ・イン・ドリームズ」は前述の「アメリカン・ロックVol.3」によると「デビュー前のヴェルヴェッツのレパートリーでもある」とのことだ。

このアルバムは1967年に発表された。このCDはポリグラム・レコードPolyGramRecordsから発売された米盤だ。パット・パターソンPatPattersonという人が解説を書いているが英語なのできちんとは読めていない。


2001.7.21