このアルバムを久しぶりに聴いてみて、カンはベースのホルガー・シューカイとドラムのヤキ・リーベツァイトのバンドなんだということを、あらためて実感した。「ファーザー・キャノット・イェル」を聴いても「ソウル・デザート」を聴いても「マザー・スカイ」を聴いても「ハレルワ」を聴いても、そう、思う。「ユー・ドゥー・ライト」に至っては言うまでもない。
解説はたかみひろしさん。以前、東芝レコードからカンとアモンデュール2、タンジェリン・ドリームが発売されたとき、タンジェリン・ドリームだけがセールス的に好成績を伸ばしたことを紹介し「ヴォーカルがなかったことが幸いした」のではないかと書かれている。確かにタンジェリン・ドリームは日本におけるジャーマンロックの「出世頭」だ。俺が学生の頃、他にジャーマン・ロックといえばクラフトワークとスコーピオンズだった。当時まだカンというグループが知られていなかったことがうかがえるように、この解説にメンバーの表記が「アーミン・シュミット」「マイケル・カローリ」「ホルガー・クズケイ」「ジャッキー・リーベツァイト」と書かれていて面白い。現在ではそれぞれ「イルミン・シュミット」「ミヒャエル・カローリ」「ホルガー・シューカイ」「ヤキ・リーベツァイト」と書かれるのが普通だろう。
ミステリアスなヴォーカリストダモ鈴木についても「本名鈴木健二といい、1950年神奈川県の生まれだ。彼はヨーロッパを4年間もギター一本を手に、弾き語りの旅を続け、ある日ミュンヘンのカフェテリアで歌っているところを、ヴォーカリストのマルコムが病気のためグループを離れていたので、代わりのメンバーを探していたカンのメンバーからグループ加入を誘われたのだそうだ」と詳しく書かれている。
解説にはバズコックスのピート・シェリーの言葉も引用されている。2枚のレコード盤に収められている14曲のうち6曲は編集されてオリジナルから短く切り取られている。だがカンの魅力を知るためには絶好の編集盤だ。このアルバムは1978年に発表された。これはキングレコードから発売された日本盤のアナログレコードだ。
2000.10.29