Beyond The Astral Skies / Uri Jon Roth & THE ELECTRIC SUN


果たして「ジャーマン・ロック」と言えるかどうか疑わしいのだが、今日もウリ・ジョン・ロートを紹介する。俺の記憶では、スコーピオンズを脱退した後のソロアルバム「天地震動/Earthquake」、「ファイヤー・ウィンドFireWind」はエレクトリック・サン名義のものだった。しかしソロ3作目に相当するこのアルバムは「ウリ・ジョン・ロート・アンド・エレクトリック・サン」名義となり、自らのパーソナリティを打ち出している。

ギターに加えてキーボードやベースも主にウリ・ロート自らが弾いているようだ。ウレ・リトゲンUreRitgenがベースを弾いているのは、たったの2曲だけであり、彼は単なるゲスト扱いのようになっている。ドラムスはクライヴ・バンカーCliveBunkerというミュージシャン。他にはヴォーカルにMichaelFlechsich、ElizabethMackenzie、バイオリンとビオラでRobertCurtis、その他コーラスなどでJenniEvans、DorothyPatterson、NickyMoore、ZenoRoth、RainerPrzywaraなどがクレジットされている。なおジーノ・ロートは実弟だそうだ。

サウンド的にはシンフォニックな傾向が強まっている。基本的にはトリオのギター・バンドなのだが、効果的にキーボードが使われ、コーラスなどの多用によって豪華で荘厳なイメージを紡ぎだしている。解説の大野奈鷹美さんは、このアルバムをジャンル分けするのは難しいといい「私の場合、『ジーザス・クライスト・スーパースター』のサウンドトラックやリック・ウェイクマンの『アーサー王と円卓の騎士』、エマーソン・レイク&パーマーの『恐怖の頭脳改革』、キング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』と『太陽と戦慄』、ピンク・フロイドの『狂気』と『原子心母』、『ザ・ウォール』etc.の入った“心の中のイマジネイションを刺激する”棚に入ってしまう」と述べている。名立たる名盤と比するこの言葉はいささか尻がこそばくなるが、確かにアルバム後半部分のロック・オペラに仕立てあげられたところは壮大な感動を呼び起こす。

見開きジャケットの内側に、カバー・ペインティングはモニカ・ダネマンによるとあり、このアルバムはマーチン・ルーサー・キングMartinLutherKingと君に捧げられた、と書かれている。このアルバムは1985年に発表された。これは東芝EMIから発売された日本盤のアナログレコードだ。


2000.10.28