Move On / EPSILON


ジャーマン・ロックなのかどうか自信がなかったが、インターネットで調べると、やや曖昧な情報ではあるがイプシロンはドイツのハード・プログレッシヴ・ロックバンドという記述があったので、そういうことにしておく。そしてこのアルバムは彼らのセカンドアルバム・・・らしい。レコード棚の奥から引っ張り出してきたものだ。

それにしても俺のアルバム・コレクション棚からは、時々俺も聴いたことのないアルバムが出てくる。しかし本当に全く聴いたことがない、ということはないはずだが、初めて聴くような新鮮な気分でいられるのは、印象に残らないバンドであるからだ。と言ってしまえば身も蓋もないが、個性に乏しいバンドでは、ある。オルガン入りのジミ・ヘンドリックスというところだろうか、ブルース・ロックが基本で、演奏力はあるのだが、「うむぅ」と唸るほどのテクニックではないし、暗黒面のパワーも無い。ソロ・プレイも派手ではないし、ヴォーカルも地味だし、アルバム全体を通じて明るいのか暗いのか、ジョークなのかシリアスなのかわからない中途半端な印象を受ける。

ああっ、しまった。悪口ばかり書いてしまった気がする。もしイプシロンの大ファンで、毎日欠かさず聴いているとか、ファンクラブに入っているという人がいたらどうしよう。ごめんなさい。確かにスター性はないかも知れないけれど、カルトな雰囲気を持っていることは確かだ。1曲目の「WalkingOnTheWay」では「へい、へい、へい」とダミ声のコーラスが怪しいし、2曲目の「SheBelongsToMe」ではベートーベンの「トルコ行進曲」をモチーフにした演奏があったりする。ベースとドラムのリズムはずっしりと重厚に響いている。また比較的ハモンド・オルガンが前面に出ているB面1曲目2曲目あたりは幻想的で、俺にとってはダルな魅力を感じるところではある。

と書いてきて、だ。これが俺の良いところというか悪いところというか、何度か聴いているうちに、とっても耳にキモチヨクなってきたのだ。アメリカでもイギリスでもなく、大陸の音楽という雰囲気がある。声域の狭いヴォーカルのしわがれ声も、デヴィッド・カヴァーディルに似た魅力が感じられる。あー俺って単純だなあ。いつの間にやらリフが頭の中から離れない。

メンバーはMichaelWinzkowski(LeadVocal,Leadguitar,BackingVocals)、WalterOrtel(Organ,Piano,ElectricPiano,AcousticGuitars,BackingVocal)、MichaelErtl(Bass)、HartmutPfannmuller(Drums,Peucussion)だ。ゲストとしてCurtCress(Drums,Percussion)が4曲に、RainerMarz(SecondLeadGuitar,Choir)が3曲に、PeteBender(Choir)が2曲に、ChristianFelke(Flute)が1曲に参加している。

世の中にはいろんな音楽があふれているなあ、ということを感じてくれたら嬉しい。このアルバムは何時の発表なのかもわからない。Bellaphoneから発売されたアナログレコードで、たぶん独盤だ。俺のコレクションには不思議なアルバムがまだまだ控えているぞ。これからも楽しみにしていてくれ。


2000.10.26