Black Out / SCORPIONS


いやースコーピオンズはいいなあ。だいたい俺がロックというものを聴くようになったのはコイツラのおかげなんだ。クラウス・マイネのヴォーカルを聴くことができたら、ルドルフ・シェンカーのギターを聴くことができたら、それだけで最高の気分になれる。

しかしこのアルバムは、手にしてからあまり聴くことはなかった。何故かと言うと、彼らの得意技は印象的なリフにあったのに、このアルバムではいやにギターがコードをなぞるフツーのバッキングなんだ。ウルリッヒ・ロートが辞めてから、つまりアルバム「ヴァージン・キラー」とライヴ・アルバム「トーキョー・テープス」までが俺の大好きなスコーピオンズだった。「ラヴ・ドライヴ」は未だに持っていないし、「アニマル・マグネティズム」もほとんど聴いていないんだ。

音楽シーンが「パンク」「ニュー・ウェイヴ」に移行するにつれ、俺の趣向も変化し、スコーピオンズから次第に離れていった。しかし1984年のアルバム「ラブ・アット・ファースト・スティング/禁断の刺青」は凄かった。いったいこいつらは何というパワーを持っているのだろうと驚いた。「ロックを信じる」とはこういうことかと思い知らされた。流行に媚びず「これが俺達のロックだ」と叫ぶ彼らに後光が射して見えた。

そしてあらためてこのアルバムを聴くと、随所にキラリと光るところが見える。なにやらだらだらと歯切れが悪いと思われた演奏が、次の作品への手がかりを得ようとした試行錯誤の過程であったに違いないと思えるようになった。そして何よりもクラウス・マイネのヴォーカルが鬼気迫る勢いだ。凄まじい。圧倒的な存在感で迫り来る恐るべきヴォーカリストだ。

このアルバムは1982年に発表された。RVCcorporationから発売された日本盤のアナログレコードだ。ライナーにファンからのイラストが紹介されたりしていて、当時の人気がうかがえ、ほのぼのとした雰囲気を感じるのだが、当時の俺には、なんだかミーハー・バンドに成り下がった気がして、これも気に食わない一因だったんだろうなと思う。


2000.10.24