ファーストアルバム「原子帰母Affenstunde」、サードアルバム「ホシアンナ・マントラHosianna Mantra」そしてこの5作目のアルバムを聴いてみると、とても同じバンドの作品とは思えない。確かにこれらのアルバムではフローリアン・フリッケを除いてメンバーががらりと変わっている。そしてフリッケ自身も楽器をムーグ・シンセサイザーからピアノへ変えるという変化をみせている。
このアルバムに参加しているのは、奇しくもファーストアルバムの構成と同じ3人。ライヴを考えると変則的なメンバー構成だが、バンドとして最もコンパクトな単位ではある。フローリアン・フリッケという人の好みなのだろう、この3人での活動が安定的に続いていく。
収められた曲は6曲で、最後の1曲はタイトル曲で19分26秒の大作である。アナログレコードではA面に5曲、B面全部をこのタイトル曲が占めていたらしい。この叙情性はいったい何だろう。何故か懐かしく、しかしどこで聴いたのかと問われれば、比すべきものは何も思い付かない。ロックなのかジャズなのか。ポップなのかアバンギャルドなのか。ドラマチックであるが決して押し付けがましくはない。ひたすら優しさを感じる中に、熱いインプロビゼーションが展開する。「ホシアンナ・マントラ」よりもこのアルバムこそ彼らの最高傑作ではないだろうか。
ジャケットの中心に据えられているのは弓を引く日本の武士だが、音楽は日本と全く関係ない。このアルバムは1975年に発表された。そしてこれは1994年にキングレコードから「ユーロピアン・ロック・コレクション」として発売された日本盤のCDだ。
2000.9.23