Hosianna Mantra / POPOL VUH


「hosianna」とは神を賛美する声、「mantra」はヒンドゥー教で呪文のこと。アルバムタイトルもジャケットも宗教的な印象を受けるが、むしろサウンドは叙情性を感じさせる。クラスター&イーノの「アフター・ザ・ヒート」のようであり、タンジェリン・ドリームのようであり、ピンク・フロイドのようであり、喜太郎のようでもある。シンセサイザーを多用し、土着的なリズム感があったファーストアルバムに比べて、ここには心穏やかな世界が広がっている。

このアルバムではシンセサイザーが使われておらず、ピアノ、ギター、オーボエ、バイオリンなどで演奏されている。1曲目はやや不安を感じさせるピアノ主体の曲で、ピアノを弾くのはリーダーであるフローリアン・フリッケFlorianFricke。このアルバムでは彼自身の名前が「ポポル・ヴー」としてクレジットされている。2曲目はギターをフィーチャーした叙情的な曲。3曲目はタイトル曲で、ややブルース感のあるフレーズのギターに、ディヨン・ユンDjongYunという名の韓国人らしい女性ヴォーカリストが透明な歌声を聴かせてくれる。この3曲が「ホシアンナ・マントラ」という名前で括られていて、続く4曲目から8曲目までは「DasV.BuchMose(旧約聖書モーゼの5書のことだろうか)」という組曲になっている。

クレジットされているメンバーを紹介しておこう。ポポル・ヴー=フローリアン・フリッケ(Piano、Cembalo)、ConnyVeit(E&12−String−Guitar)、RobertEliscu(Oboe)、ディヨン・ユンDjongYun(Sopran)、KlausWiese(Tamboura)、そしてゲストはFritzSonnleitner(Violin)である。

ポポル・ヴーの最高傑作と言われる作品だ。確かにバンド名にふさわしいイメージのアルバムだ。このアルバムの発表年だが、このCDには1973年と書かれていて、松本昌幸氏はアルバム「一人の狩猟者、そして七人の狩猟者Einsjager&Siebenjager」の解説でも1972年発表と書いているが、書籍「ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・プログレッシヴ・ロック」では小堺雄三氏が1972年の発表と書いている。これはキングレコードから「ユーロピアン・ロック・コレクション」として1994年に発売された日本盤のCDだ。


2000.9.22