Affenstunde / POPOL VUH


バンド名から受ける印象というのがある。例えば「アモンデュール」という名前を聞くと、それだけで重厚で攻撃的な音楽を連想しないだろうか。「ブラック・サバス」はどうだろう。いかにもバンドのイメージを的確に表わした名前だとは思わないか。では「ポポル・ヴー」という名前はどうだろう。ちょっと愛敬が感じられて、可愛いイメージを受ける名前だが、実は生半可な音楽ではない。

シンセサイザーを全面的に使った電子音楽だ。だが打楽器は生楽器を使っていて、サウンド・エフェクトとして自然音を使っているので、ミニマル・ミュージックの手法を使っているが決して冷たくは感じない。タンジェリン・ドリームのファーストアルバムに近いアプローチと言えるだろうか。しかし打楽器のせいだろうか、ドイツ的というよりアフリカ的なイメージを感じるアルバムだ。

バンドのリーダーはフローリアン・フリッケFlorianFricke。このアルバムではシンセサイザーを音楽の中心に使っているが、後に「ムーグ・シンセサイザー」をクラウス・シュルツに譲り渡したという逸話が残っている。そしてポポル・ヴーはアコースティックに変化していくということだが、このアルバムはクラフトワークやタンジェリンドリーム、クラスターのいずれとも異なるドイツ電子音楽の試みとして興味深い作品だ。

アルバムにクレジットされたメンバーは、フローリアン・フリッケFlorianFricke(MoogSynthesizer)、HolgerTrulzsch(Percussion)、FrankFiedler(Synthesizer−Mixdown)の3人。二人の男と一人の女が民族楽器を周りに並べ、ムーグ・シンセサイザーのパネルの前に座っている写真がアルバム裏にある。

このアルバムはポポル・ヴーのファーストアルバムで、1971年に発表された。これはPキングレコードから「ユーロピアン・ロック・コレクション」として1995年に発売された日本盤のCDだ。邦題が「原子帰母」と付けられているが、ピンクフロイドの「原子心母」とは全然イメージがつながらない。

2000.9.18