どうだ、まいったか。と言ってもほとんどの人には通じないかも知れないが、俺のページをずっと読んできてくれた人はわかるはずだ。これはキュアーのロバート・スミスRobertSmithのプロジェクト「グローブ」のアルバムだ。俺はこいつを何年も探し続けてきた。シカゴへ行ったときも立ち寄るショップのあちこちで慣れない英語を使い店員に尋ねたりしたのだが、結局買うことはできなかった。
だから掲示板でCDが発売されていることを教えていただいたときには感激した。そして新宿のWAVEで売っていたと教えてもらい、いよいよ再会することができる喜びに胸が震えた。さらにMさんからは、HMVのページでオンライン購入できるとの情報をいただいた。俺はそれから何回もHMVにアクセスし、検索をかけながらそのシステムに感動した。
HMVのページを見ながら購入寸前でためらっていた。というのはだ、俺はオンラインでCDは買わないことにしていたからだ。これほどインターネットを日常的に使っていて、それはどういう訳だ、と尋ねる人もいる。だが考えてみてくれ、オンライン販売は便利なのだ。豊富な在庫があり、いつでも自由に、しかも安い価格で購入することができる。そんなことに手を出したら、俺の給料は全額がCD代に消えてしまうに違いない(^_^;)
というように俺は身の程を知っている。偉いだろう(^_^;)だからCDと出会うのはある種の「縁」だと思う事にして、ほとんど近年は中古CD店を徘徊することが多い。そう決めておけば、たまにしか店に行くこともできないし、出会ったときの喜びはひとしおだ。散財する心配も・・・やや・・・少なくなる・・・と思うんだが、店に行くときは日頃のフラストレーションが溜まっているので、結局まとめ買いをすることになる。でも、どうなんだろう。俺は10枚〜20枚程度のCDを一度に買うなど普通の出来事だと思うのだが、どうやら驚いたり心配する人もいるようだ(^_^;)
話をこのアルバムのことにすすめよう。学生時代、貸しレコード店に通いつめていた俺は、当時もやはり一度に10枚くらい借りていた(^_^;)。「ニュー・ウェイヴ」という言葉でくくられていた当時のロック、80年代はまるで進化の「カンブリア時代」のように雑多な音楽がシーンに溢れ出した時代だ。俺の音楽体験の主要な出来事は、この1980年代にある。そしてこのアルバムにも出会った。
レンタルレコードを利用することで、様々な音楽に触れることができた一方で、カセットテープにコピーされたものしか手元に残らないという状態になった。借りたレコードはジャケットをコピーし、カセットテープのケースに組み込んで保存していた。だから俺の記憶の中には、どのアルバムも灰色の印象が残っている。せつない記憶だ。レコードがCDに置き換わるにつれ、中古市場に使われなくなったレコードが破格の値段で放出される時期があった。その時にある程度の音源は確保したのだが、それでもしかし俺の音楽探しは、この失われた80年代を再び探し求める作業でもある。
CDをプレイヤーに収め、大きな音で聴く。当時の衝撃がまざまざと脳裏に浮かぶ。電子音楽と肉体的感性の見事な融合。大胆な作風。出し惜しみせず、様々なアイデアを出し尽くしたようなアルバムだ。もちろん好き嫌いはあるに違いない。万人に受け入れられるものではないだろう。日本びいきなのだろうか、単にエキセントリックなイメージを狙ったのだろうか、テレビの時代劇からの音が使われたりしている。「なにがなんでも井筒屋から銭をもらわなきゃ」の繰り返しは、まさしくカルト・ミュージックの名にふさわしい。おまけにこのCDには、オリジナル・アルバム未収録のトラックが3曲もある。
作曲とアレンジはスティーヴン・セヴェリンStevenSeverinとロバート・スミス、プロデュースにはMerlinGriffithsという人も加わっている。すまない、ジャーマン・ロックを紹介するはずだったのだが、今日はこのアルバムを紹介せずにはいられない。日本橋の有名な中古レコード店「○か×か」で手に入れた。見つけたときは本当に我が目を疑った。このアルバムは1983年に発表された。このCDはメトロノーム・ミュージックMetronomeMusikGmbHから発売されたもので、おそらく1990年の発売のドイツ盤だ。
2000.9.1