「JAZZ」とは「おおぼら、でたらめ、ナンセンス」という意味があるらしい。アルバム最後の13曲目には「モア・オブ・ザット・ジャズ」という曲があり、そこでは自分たちの音楽のことを「JAZZ」と言っている、彼ら得意のブラックジョークだ。
アルバムのいたるところでブラックジョークが目に付く。下品な歌詞も多い。そものずばりの曲もあるし、聴きようによっては「バイシクル・レース」も卑猥な意味に受け取れる。だが下品な歌であっても、さらりと聴かせるところがクイーンらしい。ところで、こういう下品な歌詞をゴージャスに演奏するところ、なかでも「レット・ミー・エンターテイン・ユー」や「デッド・オン・タイム」のようなたたみかけるスピード感は、フランク・ザッパに近いものを感じる。
どの曲も親しみやすく味わい深い。小細工をせずストレートに攻めてくる。「ジェラシー」は美しいバラードだし、「うちひしがれて」は実に軽快なロックだ。「セヴン・デイズ」もじっくりと聴かせる歌だし、「ドリーマーズ・ボール」のジャズ・バラードも、フレディの声がしっくり聞こえる。もちろん「バイシクル・レース」は名曲だし、アルバム冒頭の「ムスターファ」の一撃も強烈な印象だ。ただ「ファン・イット」だけは、どうも前のめりのリズムがグルーヴ感に欠けてぎこちないと思うのだが、どうだろう。
これまでファーストアルバムから7枚のアルバムを紹介してきたが、その中では最もポップで素直に楽しめる作品だ。このアルバムは1978年に発表された。このCDは1994年に東芝EMI株式会社から発売された日本盤だ。
2000.8.30