このアルバムはクイーンの5枚目の作品だ。前作「オペラ座の夜」で最高峰に達した彼らは、このアルバムでは落ち着いた王者の風格でエンターテイナーに徹している。前作と対をなすようなアルバムタイトルとジャケットデザインだが、両者のコンセプトは全く違うと言っていい。デビュー以来、強烈な個性と楽曲の完成度で聴衆をねじ伏せてきた彼らのエネルギーは、このアルバムでは「聞き手を楽しませる」ことに向けられている。クイーンのアルバムは決してBGMにはなり得ないパワーを持っていたが、このアルバムは良い意味で軽く聞き流せる懐の広さを持っている。
社会の中で生きることの意味を問う「ロング・アウェイ」、白人移民に虐げられた先住民族の悲劇を歌った「ホワイト・マン」以外の曲は、「僕」と「君」を歌った恋愛の歌であることもこのアルバムを特徴づけている。そして最後は日本語の歌詞を一部に使った「手をとりあって」だ。この評価はファンによっても様々だと思うが、アルバム最後に配したところから、彼らは日本のリスナーに向けて真剣にメッセージを送ったものと思われる。歌詞を大切にするクイーンならではだ。
このアルバムは1976年に発表された。このCDは1993年に「クイーン・デジタル・マスター・シリーズ」として東芝EMI株式会社から発売された日本盤だ。
2000.8.26