Queen2 / QUEEN


ファーストアルバムに比べて各メンバーの演奏力が格段にアップした印象を受ける。楽器の音がクリアになり、自信にあふれたダイナミックな演奏を聴かせてくれる。とりわけブライアン・メイのギターが素晴らしい。アルバム冒頭には「プロセッション」という1分13秒の前奏曲が収められているが、これが普通のバンドならばシンセサイザーを使うところを、ギターの演奏、それもほとんどエフェクト無しのピュアなサウンドのオーヴァーダビングで優雅な雰囲気を出している。そしてすぐさま続く2曲目は6分14秒の大曲「父より子へ」だ。ここでの伸びやかなソロ・ワークも素晴らしい。そして流れるように3曲目「ホワイト・クイーン」、4曲目「サム・デイ・ワン・デイ」へと続く。いずれもドラマチックな曲で、ここまでがブライアン・メイの手による作品だ。

5曲目の「ルーザー・イン・ジ・エンド」はロジャー・テイラーの作品。母と息子の心の葛藤を歌ったファンキーな曲だ。そしてここまでがアナログレコードでのA面であり、ファンの間では「ホワイト・サイド」と呼ばれている。そしてこの後はアナログ盤のB面にあたり「ブラック・サイド」と呼ばれている。ここから先は全てフレディー・マーキュリーの作品だ。

アルバム解説の河井美穂さんは「『今度のアルバムは”GoodVersusEvil(善対悪)”をテーマにしたものだ』レコーディングのさなかに、フレディはそんな風に『クイーン2』のことを説明している」と書いている。見事な構成のドラマチックな曲が続くこの「ブラック・サイド」は、ただ「素晴らしい」と驚嘆の声を上げるしかない出来栄えだ。レコード・コレクターズ増刊「ブリティッシュ・ロックVol.2」でこのアルバムの記事を書いている小野島大さんは「『ニューミュージック・マガジン』の当時のレヴューで大貫憲章さんが本作について『クイーンのサウンドの一閃にイギリスのロックの歴史の幻を垣間見る』と書かれているが、同感。彼らの登場は、パンク以前のブリティッシュ・ロックの集大成的役割を果たしたと考えられるからだ」と書いている。まさにその通り。そして逆に美学の極致へたどり着いたブリティッシュ・ロックは、技術と対極にあるパンクへと退化してゆくことになるのだ。

個人的には当時シングルレコードでよく聴いたアルバム最後の曲「輝ける7つの海」が懐かしく、今聴いても胸がワクワクする。このアルバムは1974年に発表された。このCDは「クイーン・デジタル・マスター・シリーズ」として東芝EMI株式会社から1994年に発売された日本盤だ。

2000.8.21