Tertio / ATOLL


「セカンドアルバムに勝るとも劣らない高水準のアルバム」とは、たかみひろし氏の言葉だが、正直言って最初にこのアルバムを聴いた時はがっかりした。実際このアルバムをターンテーブルに載せることはあまりなかったし、これ以降アトールのアルバムを耳にすることはなかったので、当時の落胆は相当のものだったと思う。だがこのアルバムの素晴らしさは相当のものであるし、今から思えば「夢魔」の印象があまりに強烈であったた反動で、このアルバムの良さがわからなかったに違いない。

もう一つ言えることは、アルバム冒頭のサウンドだ。「夢魔」では一見おだやかなイントロが、一天にわかに掻き曇る、というか、たちまち暗雲が立ち込めるかのように不安と狂気に覆い尽くされる展開が見事だった。だがこのアルバムでは、なんとも牧歌的な軽い調子でアルバムが始まるのだ。そしてこのポジティヴな感覚はアルバム全体を通じて感じられる。さらに何よりも決定的に違うのは、ヴァイオリニストの不在だ。メンバーとしてクレジットされているのはセカンド・アルバム「夢魔」にあった6人からリシャール・オーベルトRichardAubert(Violon)を除いた5人になっている。その分、曲中に占めるギターとキーボードの役割が大きくなっているが、残念ながらヴァイオリンの魅力をカバーするには到っていないという気がする。

見開きの内ジャケットにはメンバー5人のステージ写真とともに、メンバーの顔写真が載っている。それに加えてゲスト参加しているLisaDeluxeとStellaVanderの写真があるが、この2人はマグマMagmaのコーラス・ガールであると、たかみひろし氏はセカンドアルバム「夢魔」の解説の中で書いている。なおこのアルバムの解説を書いているのは酒井康さんだ。

このアルバムのオリジナル発表年は不明だ。これは1980年にシリーズ第3期の「ユーロピアン・ロック・コレクション2000」としてキングレコード株式会社から発売されたものだ。

2000.8.14