Fire Wind / ELECTRIC SUN (Uri Roth)


これはウリ・ロートのバンド、エレクトリック・サンのセカンドアルバムだ。昨日紹介したファーストアルバムには「このアルバムはジミ・ヘンドリックスの魂に捧げられた/This album is dedicated to the Spirit of Jimi Hendrix」と書かれていたが、このアルバムには「アンワー・エル・サダトに捧げられた/This album is dedicated to Anwar el−Sadat」と書かれている。「エル・サダト」って誰のことだろう?

とはいえ、ウリ・ロートはますますジミ・ヘドリックスを意識したものになっている。ファーストアルバムと比べて大きく感じられるのは、歌の比重が増したことだ。スコーピオンズには朗々と歌うスター・ヴォーカリスト、クラウス・マイネがいたということもあるのだろうが、どちらかと言えばダミ声で控えめに歌うスタイルだったウリ・ロートだった。しかしこのアルバムでは、思いっきり歌に打ち込んでいる。その威勢の良さは1曲目の「キャスト・アウェイ・ユア・チェンジズ」から見られる。ギター・プレイも素直で、心のおもむくままに弾いているという感じで、聴いていて実に気持ちが良い。

この気持ち良さはアルバム全体を通じて感じられるものだ。どの曲からもウリ・ロート節といえるギタープレイが冴え渡る。異色の曲と言えば、5曲目で1:23と短い「前奏曲宇宙短調」で、これはギターに深いエフェクトをかけて、まるでシンセサイザーのような(という言い方も変なのだが)スペイシーなサウンドエフェクトを作り出している。そして最後の曲はファースト・アルバム同様、10:42の大作となっている。組曲「エノラ・ゲイ」、「ヒロシマ・トゥデイ?」という副題が付いている。歌を聴かせるアルバムの中で、この大作はインストルメンタル重視の曲だ。冒頭にプロペラ機の飛び立つ音が入り、曲の随所に飛行機の音が挿入される。a)エノラ・ゲイ、b)チューン・オブ・ジャパン、c)エノラの急襲、d)哀悼の詩、の4部に分かれていて、a)の「エノラ・ゲイ」ではヒロシマの悲劇を綴った歌が入り、b)c)d)はインストルメンタル曲となっている。ウリ・ロート独特の哀愁のあるギターが深い悲しみを誘う曲だ。

このアルバムは1981年に発表された。このCDは「TheEternalMasterWorks」と名づけられ、BMGビクター株式会社から発売された日本盤だ。ジャケットはファーストアルバムと同じく、モニカ・ダネマンが描いている。

2000.8.11