Earthquake / ELECTRIC SUN (Uri Roth)


ウリ・ジョン・ロートのギターは、粘りのある上に研ぎ澄まされたシャープなエッジも持っている。エフェクトは控えめで、基本的にはアンプの自然なナチュラル・オーバードライブ、時折軽くフェイズ・エフェクトをかけ、ワウワウペダルを使う。その彼が信奉しているのは、ジミ・ヘンドリックスとのことだ。

このバンド「エレクトリック・サン」は、アルバム「TakenByForce」を発表後にスコーピオンズを脱退したウリ・ロートのグループだ。彼はこのバンド名で3枚のアルバムを残したとのことだが、このアルバムはファーストアルバムにあたる。アルバム解説の伊藤政則さんによれば「ウリ・ジョン・ロートは『VirginKiller』発表後にSCORPIONSを辞めていればよかったというニュアンスの発言をしている」とのことだが、このアルバムにはスコーピオンズでもみられたモチーフが数多くある。おそらくスコーピオンズにおいても彼の影響は大きかったと思うので、脱退し自分のバンドを持ちたいと思った背景には、やはりジミ・ヘンドリックス同様にトリオで演りたいという願いがあったのだろう。

さてこのアルバムのジャケットを描いたのはモニカ・ダネマンという女性。この後、ウリ・ロートと共に生活を始めることになったそうだが、彼女は以前ジミ・ヘンドリックスの最後の恋人であったということだ。ジャケット裏には自らをモチーフにした絵もあるので紹介しよう。


このアルバムでウリ・ロートとともに演奏するのは、ウレ・リトゲンUreRitgen(Bass)とクライグ・エドワーズCliveEdwards(Drums)だ。クライヴ・エドワーズはアルバム発表後に脱退し、その後のツアーメンバーとしてはシダッタ・ゴータマSidhattaGoutamaというドラマーに代わっている。

例えば1曲目、バンド名と同じ「エレクトリック・サン」でのワウワウペダルによるプレイ、流れるようなギターソロ、5曲目の「サンダウン」、7曲目の「愚者徘徊」などは、まるでスコーピオンズの曲のようだ。思えばウリ・ロートのギターとクラウス・マイネのヴォーカルは絶妙のコンビだった。メンバー全員が持ち味を出しつくし、スコーピオンズはバンドとして生き生きしていた。残念ながらこのエレクトリック・サンでは、他の2名はウリ・ロートの「サポート」にとどまっているように思えて少々残念だ。3曲目のブルージーな「炎の車」や優しいギターの2曲目「神秘のライラック」、静かで幻想的な雰囲気の4曲目「ジャパニーズ・ドリーム」などはスコーピオンズとは違った味のある曲といえよう。

そしてアルバム最後を飾るのは、タイトル曲「天地震動/Earthquake」だ。インストルメンタル曲で、10:39の大作。クラシカルなフレーズを多用し、交響曲のように重厚な曲となっている。そして彼には珍しくギターに深いエフェクトをかけたり、フィードバックを多用したりと意欲的な作品だ。

このアルバムは1979年に発表された。このCDは「TheEternalMasterWorks」と名づけられ、BMGビクター株式会社から発売された日本盤だ。

2000.8.10