Stop Making Sense / TALKING HEADS


久しぶりにこのアルバムを聴きながら、CDケースの裏を眺めていると「Why a big suit?」という記述があった。そうだ、デヴィッド・バーンのトレードマークはオフ・ホワイトのでかいジャケットだったな。そして今ではおぼろげな記憶になっているのだが、当時、来日したトーキング・ヘッズのコンサートを見に行ったことを思い出す。バイト先の友人Nくんがトーキング・ヘッズのファンで、一緒に行こうと誘われたのだ。俺はトーキング・ヘッズのことをよく知らないままについて行った。彼からは多くの音楽を教えてもらい、そのどれもが素晴らしいものだったので、きっと良いコンサートに間違いないと思ったからだ。今はどうしているのかなあ。で、結果的には、いまいちよくわからなかったのだが、観客の異様な興奮が印象に残っている。当時の俺にはまだトーキング・ヘッズの良さがわからなかったのだな。時期的にいえばアルバム「リメイン・イン・ライト」の頃だから、ギターはエイドリアン・ブリューだったはずだ。そう、エイドリアン・ブリュー。彼の存在はトーキング・ヘッズにとって大きかったと思う。

このアルバムはトーキング・ヘッズのライブ・アルバムなのだが、俺にとってのトーキング・ヘッズは「リメイン・イン・ライト」であるので、やや物足りない印象を受ける。例えば冒頭の「サイコ・キラー」だが、グルーヴ感がまったくない。まるでカラオケ、それもMIDIのチープな打ち込み伴奏にデヴィッド・バーンが歌っているように思う。思えばコンサートで見たトーキング・ヘッズはもっと熱かった。そのアグレッシヴでフィジカルな感性をバンドにもたらしたのは、おそらく、エイドリアン・ブリューだ。

残念ながらこのアルバムに収められたコンサートにエイドリアン・ブリューの姿はない。クレジットされているのはデヴィッド・バーンDavidByrne(Vocals,Guitar)、クリス・フランツChrisFrantzDrums,Vocals)、ティナ・ウェイマウスTinaWeymouth(Bass,Vocals)、ジェリー・ハリソンJerryHarrison(Guitar,Keybords,Vocals)、バーニー・ウォーレルBernieWorrell(Keybords)、アレックス・ウェイアーAlexWeir(Guitar,Vocals)、スティーヴ・スケールズSteveScales(Percussion)、リン・マーブリィーLynnMabry(Backingvocal)、エドナ・ホルトEdnahHolt(Backingvocal)の9人だ。

だがアルバムを聴き進んでいくと、次第にバンド全体の生き生きとした有機的なシステムが感じられるようになる。アナログ盤ではB面になるだろう6曲目「ワンス・イン・ア・ライフタイム」からコンサートの雰囲気が熱く感じられる。そう、アナログ盤でA面に相当する1曲目から5曲目は「静」のトーキング・ヘッズ、6曲目から最後の9曲目までは「動」のトーキングヘッズと言っていいだろう。

このアルバムは1984年に発表された。このCDは東芝EMI株式会社から「クール・プライス」シリーズとして1996年に発売された日本盤だ。

2000.8.6