実のところ、俺は70年代アメリカン・ロックについては知るところが少ないのだ。興味がないのかと言えばそうではなくて、いろいろと聴きたいと思いながらも学生時代に音楽にかけることのできる金は限られているので、なかなか手が出なかったというところだ。この他にも聴きたいバンドはいくつもある。いまのところは気まぐれに聴いているが、そのうち70年代アメリカン・ロックの全貌を把握したいという野望を持っている。ところで今日、これを紹介したかったのは、エアロスミスとの対比がしたかったのだ。
このアルバムが発表されたのは1970年。エアロスミスのファーストアルバムが発表されたのは1973年ということだから、やや時期的に違いがあるとはいえ、いずれも同時代のロックと言っていいだろう。しかしそのサウンドは明らかに違いがある。エアロスミスの重厚なサウンドに比べて、グランド・ファンクのサウンドはからりと明るい。軽い、というのではない。大自然の明るさ、と言えばいいだろうか。素肌にTシャツ一枚をかぶせ、炎天下で汗のしたたるロック、という明るさだ。それに比べてエアロスミスのサウンドは、まさに夜の都会のイメージさせる重厚さと言えよう。
全部で8曲が収められているが、後半の4曲はいずれも長い曲で、アドリブ中心のブルース・ロックが楽しめる。いかにもライブのための曲という感じで、聴かせ所、盛り上げ所の仕掛けがあちこちに用意されている。とりわけ最後の「孤独の叫び/InsideLookingOut」は9’31”の大作だ。これはオリジナルではなく、トラディショナル・ソングのカバーのようだが、当時も注目を浴びて、彼らの初期の代表作の一つとなっているらしい。
このアルバムは1970年に発表された。このCDは東芝EMI株式会社から「クール・プライス」シリーズとして1995年に発売された日本盤だ。
2000.7.29