Product / BRAND X


ブランドXはジェネシスGenesisのドラマーで、ピーター・ゲイブリエルPeterGabriel脱退後はバンドの実質的リーダーであったフィル・コリンズPhilCollinsが1975年に結成した。当時ジェネシスはスター・プレイヤーであるピーター・ゲイブリエルを失ったところであったから、フィル・コリンズの別プロジェクト始動は微妙なところがあったのだろう。バンド名を「BrandX」・・・今で言うなら「無印良品」というところだろうか、メンバーの詳細も明らかではなかったとの記憶がある。デビュー・アルバムの「アンオーソドックス・ビヘイビアー」のジャケットには、ブラインドの向こうに顔を隠し、少し開いた隙間からこちらを伺っている誰かさんの姿がある。

株式会社ミュージック・マガジンの雑誌「レコードコレクターズ」増刊「ブリティッシュ・ロックVol2」によると、デビュー・アルバムは1975年の9月から10月にかけて録音されたが、発表されたのは1976年の6月だったそうだ。ピーター・ゲイブリエルが抜けた後の初めてのジェネシスのアルバム「トリック・オブ・ザ・テイル」が1976年2月の発表なので、時期を慎重に選んだふしがある。ジェネシスで聴かれるのとは一味も二味も異なるフィル・コリンズのドラムは好評だったようだ。セカンドアルバム「モロッカン・ロール」を発表した後、ライヴアルバム「ライブ・ストック」を発表、1978年9月にサードアルバム「マスクス」が発表されるが、ここにフィル・コリンズは参加していない。当初からブランドXはセッション・ミュージシャンの複合体的なものなので、1977年6月のジェネシスからのスティーヴ・ハケットの脱退、1978年4月にアルバム「そして3人が残った」の発表と、ジェネシスの活動が忙しかったからと言われている。そして1979年9月に発表されたこのアルバムには、再びフィル・コリンズが参加している。

ブランドXを初めて聴いたのはこのアルバムだった。プログレッシヴ・ロックの王者「ジェネシス」のフィル・コリンズが中心と聞いていたのだが、それにしてはいやにポップで聴きやすかったので、やや落胆した覚えがある。当時は目を三角に、眉をしかめて音楽を聴いていた俺には拍子抜けだったのだ。この凄まじいインタープレイの良さがわかってきたのは、しばらく経ってからのことだった。このアルバムに参加しているミュージシャンは、フィル・コリンズ(Drums)、ジョン・グッドソールJohnGoodsall(Guitars、Vocals)、マイク・クラークMikeClarke(Drums)、ジョン・ギブリンJohnGiblin(Basses)、ロビン・ラムレイRobinLumley(Keybords,Gunfire,Chainsaw)、パーシー・ジョーンズPercyJones(Basses)、ピーター・ロビンソンPeterRobinson(Keybords,Gunfire,Vocals)、モーリス・パートMorrisPert(Percussion)である。

一曲目「ドント・メイク・ウェイヴス」はジョン・グッドソールの作曲で、心の中に染みわたるような実に印象的なメロディーで始まる。ジョン・グッドソールのギター・プレイは、もっと評価されてしかるべきだと思う。3曲目「ソーホー」もジョン・グッドソールとフィル・コリンズの共作だ。テクニシャン・プレイヤーというよりも、メロディー・メイカーとして素晴らしいギタリストだと思う。前後するが2曲目「ダンス・オブ・ザ・イリーガル・エイリアンズ」ではパーシー・ジョーンズのベースが堪能できる。そして4曲目「アンド・ソー・トゥ・F」は激しいインタープレイが楽しめる曲で、いかにもテクニシャンの集合体であるブランドXならではの曲だ。ここでもジョン・グッドソールはソリストとして素晴らしいプレイを聴かせてくれる。

B面には5曲が収められているが、いずれも印象的な曲ばかりだ。FM番組「ライヴ・フロム・ザ・ボトムライン」でこの時期のライヴを聴いて熱くなったことを覚えている。ポップな感覚とジャズ的なアドリブが溶け込んだ素晴らしいアルバムだ。このアルバムは1979年にパスポート・レコードPassportRecords,Inc.から発売された米盤のアナログレコードだ。

2000.7.22