ポール・スタンレーがキッスの「光」だとすれば、ジーン・シモンズは「闇」だ。しかしそれは邪悪なものではなく、演劇的なカリカチュアされたものだ。ポール・スタンレーのソロ・アルバムでも感じたことだが、この2人に加えてピーター・クリスとエース・フレーリーという4人の個性のぶつかり合いがキッスというバンドの豊かさを作っていたように思う。バンドというのはそういうものだ。個性のぶつかりが多くのリスナーを夢中にさせる魔法を生み出す。
もしこれらのアルバムが、例えばLP片面ずつに押し込められて、キッスとして2枚組みのアルバムで出されたならば、また内容の濃いものになっただろう。ファンの身勝手なのだろうが、どの曲を聞いても、キッスとして演って欲しかったとの思いが出てくる。例えば3曲目の「今宵のお前/シー・ユー・トゥナイト」はピーター・クリスに歌って欲しい、とか、6曲目の「熱狂/リヴィング・イン・シン」はポール・スタンレーが歌うべきだ、とか、9曲目の「ミスター・メイク/ミスター・メイク・ビリーヴ」はエースが歌うと別な味があるだろうな、とか・・・
10曲目の「悪夢の出来事/シー・ユー・イン・ユア・ドリーム」はキッスのアルバム「地獄のロック・ファイヤー/ロックン・ロール・オーヴァー」に含まれていた曲。ジーンのお気に入りなのだろうか。そして最後の11曲目「星に願いを/ホエン・ユー・ウィッシュ・アポン・ア・スター」は、ストリングスの奇麗なバラード。これだけはキッスではできない曲だな。
このアルバムは1978年に発表された。これは日本フォノグラムから発売された日本盤のCDだ。
2000.7.20