ポール・スタンレーといえば、ファースト・アルバムのジャケットに、いやに下ぶくれの茄子のような顔で写っていたのとが忘れられない。これはキッスのスター・プレイヤー、ポール・スタンレーのソロ・アルバムだ。この時期キッスの4人はそれぞれソロ・アルバムを発表したが、いずれもキッスのメイクのままだし、アルバム・タイトルは「キッス」となっている。学生だった当時の俺は戸惑いをかくせなかった。実際このアルバムを手に入れて聴こうと思ったのは、つい最近のことだ。
このアルバムでポール・スタンレーは、いかにもアメリカン・ロックらしい音楽を追求している。言い方を変えてみれば、キッスの暗黒部分、悪魔的な部分を除いたようなロックに仕上がっている。なんといっても多感な学生時代に夢中になったヴォーカリストの声は、心の奥に染み込んでいるために、何をやってくれても狂喜してしまう以外にないのだが、やはりキッスは光と闇が互いに織りあいながら、その魅力を作り上げていたのだということを、皮肉にも感じさせてくれる。
このアルバムは1978年に発表された。これは日本フォノグラムから発売された日本盤のCDだ。
2000.7.19