Aerosmith / AEROSMITH


中学から高校にかけて、俺の興味はハードロックにあった。当時流行っていたのはキッス、クイーン、エアロスミスだった。一番俺の好みにぴったりときたのはキッスだったのだが、これは今から思えば自分を「三枚目」であることを自覚していたからかも知れない。だってクイーンは貴族だし、エアロスミスは格好良すぎた。そして彼らは年を食ってもいまだに格好良いままでいる。

これはその格好良い不良ロッカー達のファースト・アルバムだ。例えばキッスのファースト・アルバムは、エンターテイナーのプロとして計算されたものだったし、クイーンのファースト・アルバムはメンバーが互いに牽制しあい、完全燃焼しきれない作品になっていたように思う。しかしこのエアロスミスのファースト・アルバムは、彼らがやりたい音楽を実に率直に表現したものだ。彼らは基本的にこのアルバムの路線で、以降四半世紀にわたって音楽活動を続けるてきたのだ。

アルバム解説で市川哲史さんが1993年のインタビューを紹介している。「エアロスミスとは一言で言うとどういうバンドだと思いますか」との問いに対してスティーヴン・タイラーは、「ガキの頃に大好きだった音楽に取り憑かれ、一生を棒に振った5人のばか者の集まりさ」と答えたらしい。これは恐らく照れでも飾りでもなく、素直にそう思っているにちがいない。それが、また、格好いいじゃないか。ロックを信じた男達が、ここに、いる。

このアルバムに収められた曲の中で、一般的に最も評価される作品は「ドリーム・オン」だろうが、俺にとっては何といっても「ママ・キン」だ。力ずくでねじ伏せられるようなパワーにあふれるボーカル。しかしよく聴けば、実に歌うような魅力的なメロディー・ラインを奏でるジョー・ペリーが見えたりする。エアロスミスはやはりスティーヴン・タイラーとジョー・ペリーがいてエアロスミスなのだと思い知らされる。

このアルバムは1973年に発表された。これは1996年に「Super1600NicePrice」としてソニー・レコードから発売された日本盤のCDだ。

2000.7.15