The End Of An Ear / Robert Wyatt


どちらかと言えば「ロック・ボトムRockBottom」以降のロバート・ワイアットに親しんできたので、ドラム・プレイについてはあまり良く知らなかった。しかしこのアルバムでは、素晴らしいテクニックをみせてくれる。しかも意外にジャズのオーソドックスなプレイであることに驚く。初期ソフト・マシーンSoftMachineのドラマー&ヴォーカリストとして活躍したロバート・ワイアットだが、アルバム「4」を発表した後、グループを脱退してソロ活動に入る。このアルバムは記念すべき彼のファースト・ソロアルバムだ。

冒頭、テープを早回しした奇妙な声が意表を突く。ころころと細かなフレーズを叩くドラムに、はじけ転がる様な硬いパーカッションが立体的なリズム感を構築する。声はさらにパーカッション的になり、ドラムに成り代わりリズムの中心をなすようになる。左右に聞こえるアヴァンギャルドなピアノは、ワイアット自身とマーク・エリッジによるものだろうか。音楽の友社発行の「ヤング・パーソンズ・ガイド・トゥ・プログレッシヴ・ロック」によれば、ワイアットの本名はロバート・ワイアット・エリッジ。マーク・エリッジはワイアットの実兄とのことだ。

回転速度を速められたパーカッション的ヴォイスは、ピンク・フロイドPinkFloydの「ウマグマ」を想起する。そしてサイケデリックな曲があるかと思えば、インダストリアル・ミュージック風の曲あり、そしてまさしくソフト・マシーンの流れを汲むジャージーなインプロヴィゼーション曲あり、フリー・ジャズあり。バラエティに富んだアルバムであるとともに、どこか迷いを持ちながらあらゆる表現に挑戦している「若さ」も感じる。ワイアットの自筆であろうか、筆記体で裏ジャケットに書かれているので読みにくいところがあるのだが、クレジットされたメンバーは、ロバート・ワイアットRobertWyatt(Drums,Mouth,Piano,Organ)、ネヴィル・ホワイトヘッドNevilleWhitehead(Bass)、マーク・チャリグMarkCharig(Cornet)、エルトン・ディーンEltonDean(AltoSaxello)、マーク・エリッジMarkEllidge(Piano)、CyvilleAyers(AssortedPercussion)、デヴィッド・シンクレアDavidSinclair(Organ)、である。

レコード盤には1970年と書かれているが、ジャケットには1971年と記されている。CBSから発売された英盤のアナログレコードだ。

2000.6.28