キング・クリムゾンが秋に来日するらしい。同僚のNさんにチケットを予約してもらった。クリムゾンを見るのは「ディシプリン」のツアーで来日したとき以来だ。あのとき演奏が終わってステージに駆け寄り、エイドリアン・ブリューAdrianBelewに握手してもらったことを覚えているぞ。もう20年近くも前のことになる。
このところのクリムゾン、と言ってもいいと思うのだが、ロバート・フリップRobertFrippはProjekct1〜4でロックの新しい表現の可能性を広げる実験を続けてきた。それらはすべて必ずしも純粋に楽しめるものではなかったのだが、このアルバムは違う。彼らはライブを意識し、彼ら自身が演奏を楽しんでいる。そうだ、CDジャケットの裏も素晴らしいから紹介しよう。
「ロバート・フリップのレコーディング日記より」を読むと、レコーディングが終わった時の感想に、こう書かれている。「クリムゾンのレコードには、大体いつも、何らかの方法で聴衆の注意を引こうとする目論見があるものだが、今回のアルバムにはそれが全くない。完全に妥協無しなのだ。大部分の人は嫌がるだろう。どこのラジオ曲も放送してはくれまい。このアルバムの内容を把握するには、殆どの人は一度ライヴでクリムゾンを体験してみなければいけないが、誰がそんなことを望むだろう」
確かにこれまでのクリムゾンから考えるとずいぶん雰囲気の異なる曲もあるのだが、俺は一度で気に入った。だがラジオ放送で流してもらえそうにない、というところは、きっとその通りなのだろう。しかしフリップの自信の表れとして、先の日記は次のように続く。「もう、我々には先が見えている。クリムゾンがこの作品を演奏し、みんなが文句を言う。いつか誰かが、そういう文句を言う人々に作品の説明をしてくれるが、それでもまだ理解されず、無視されてしまう。そしてクリムゾンは3年から10年くらい休止して、その間、マスコミは『ロック史回顧録』を出し、この『伝説のグループ』は再び以前同様の程度で、嫌悪と敵対心と無関心、そして忠誠の対象となるだけのことだ」
「太陽と戦慄パート4」がある。またレコーディングの際には「太陽と戦慄パート5」として作られ、最終的には「フラクチャード」と曲名が変えられた素晴らしい曲がある。昔からのクリムゾンのファンにもお薦めだ。A4「イントゥ・ザ・フライング・パン」などポップ指向の曲もあって面食らうかも知れないが、聞き込むとクリムゾンらしさがじっくり味わえる。このアルバムは2000年に発売された。ポニー・キャニオンから発売された日本盤のCDだ。