Gillan / GILLAN


この素晴らしいアルバムを「カルト」と呼びたくはないのだが、聴いたことのある人は少ないだろう。その理由の一つとして、ハードロック、あるいはヘビーメタルと呼ばれるジャンルから少し外れたところに位置するからということがある。しかしこのアルバムは、まさに純粋な「ロック」というものを素直に表現したアルバムである。ジャケットの荒々しいギランの顔も素晴らしい。

イアン・ギランは言うまでもなくディープ・パープル黄金期のヴォーカリストだ。ディープ・パープルを脱退した後、しばらく活動を休止した後に「イアン・ギラン・バンド」を結成した。ファースト・アルバムはクセの強いものだったが、セカンド・アルバム「ClearAirTurbulence」は物語的な趣向の素晴らしいトータルアルバムだった。「Scarabus」はヘビーメタルとは異なるリズム感から、軽いファンキーなアルバムだと思われがちだが、よく聴けば腰のしっかりしたドライヴ感にあふれた良質なロックアルバムだ。流行に流されない強さがある。ベースのジョン・ガスタフソンとギターのレイ・フェンウィックのリズム感は最高だった。だがこのアルバムでは、旧友コリン・タウンズ以外のメンバーががらりと入れ替わってしまった。

このアルバムのメンバーは、イアン・ギランIanGillan(vocals)、コリン・タウンズColinTowns(keyboards、flute)、スティーヴ・バードSteveByrd(guitar)、ジョン・マッコイJohnMcCoy(bass)、リィーム・グノッキーLiamGenocky、となっている。しかしドラムスはこのアルバムだけのメンバーで、ツアーではピート・バーナクルPeteBarnacleというミュージシャンになることがアナウンスされていたようで、このアルバムにも写真入りで紹介されている。このアルバムのドラムスが素晴らしいだけに、少し惜しい気もする。

1曲目「セカンド・サイト」はコリン・タウンズのキーボードによるイントロデュースの小曲。続く「シークレット・オブ・ザ・ダンズ」は鬼気迫る凄いスピード感のある曲。3曲目「アイム・ユア・マン」、4曲目「デッド・オブ・ナイト」(この冒頭ベースの音圧はすごい!!)とゆったりした曲が続き、A面最後の5曲目「ファイティング・マン」は、じっくり聴かせる感動的な曲。このアルバム最大の聴きどころだ。B面1曲目「メッセージ・イン・ア・ボトル」もスピード感にあふれる曲。ポリスに同名の曲があって有名だが、もちろん、ぜんぜん違う曲。B2「不気味な男」はコリン・タウンズのピアノが曲の雰囲気を決める。B3「いかしたジョアンナ」はミドル・テンポの落ち着いたロック。A4「テレーマの僧院」は不思議な魅力の意欲的な曲。アルバム最後の「バック・イン・ザ・ゲーム」は重いサウンドの骨太ロック。徐々にスピードは高まり、アルバム最後を飾るにふさわしいエンディングを迎える。アルバム1曲目「セカンド・サイト」と同じモチーフのギターのカッティングが聴かれ、アルバム全体のトータル感を高めている。

イアン・ギランもアルバムのあちこちで思う存分シャウトしている。それにイアン・ギランとコリン・タウンズだけでなく、ギターもベースもドラムもただ者ではないという存在感がある。黒を基調にしたジャケットの雰囲気とあいまった、ソリッドな硬派のハードロックだ。1978年に東芝EMIから発売された日本盤のアナログレコードだ。来日にあわせた日本だけの発売らしい。

2000.6.24