クリス・カトラーChrisCutler、フレッド・フリスFredFrith、ダグマー・クラウゼDagmarKrauseの3人によるアート・ベアーズのサード・アルバムだ。前作に比べてより深刻さを増し、呪術的なサウンドに仕上がっている。作曲は前作同様クリス・カトラーとフレッド・フリスの共同名義だが、バンドとしての演奏の魅力よりも、手間をかけて編集されたであろう構成のおもしろさを感じさせるアルバムだ。A面では3曲目の「Freedom」が聴きどころで、どっしりと重たいリズムにフリスのアヴァンギャルドなディストーション・ギターが唸り、ダグマーの叫び声が空間を引き裂く。
何かの本で読んだ評には、アルバム作りの主導権が、クリス・カトラーからフレッド・フリスに移ったなどと書かれていた記憶がある。なるほどフリスのギターは曲の要を突いているし、得意のバイオリンも随所で聴くことができる。そんな中でもB1「Democracy」は、ヘンリー・カウの手法をよりヘヴィーに発展させたものという感じがする。重い。ひたすら、重い。逆にB3「Law」などは、ラグタイム風のホンキー・トンク・ピアノにダグマーが歌うコミカルな雰囲気の曲。しかしスラップ・ハッピーのような優雅なユーモアではなく、狂気に満ちた力ずくのユーモアを感じる。アルバムB面は5曲目「TheSongOfTheBignityOfLabourUnderCapital」の高揚する激しいピアノの連打で最高潮を迎え、最後のB−6、サウンド・コラージュ風の「Albion,Awake!」で不思議な余韻を残して終わる。
表紙を入れて20ページのパスポート・サイズのブックレットが付いていて、この世の終わりを暗示するような破滅的な何枚かの挿し絵とともに歌詞が書かれている。またこの当時のアルバムによく見られたのだが、レコード盤のレーベルが美しい。
このアルバムは198179年に発表された。ArcadesMusic/ReRecordsから発売された英盤のアナログレコードだ。30cmなんだが、回転速度は45rpm。全曲で32分程度のアルバムだ。
2000.6.22