友人KAX氏は俺のことを「お前みたいに執拗にジャケットをスキャンする奴はいない」と喜んでくれた。そうだ。俺はジャケットの扱いには神経を使っている。できるだけオリジナルに忠実に見えるように、スキャンした後も色調補正やアンシャープマスクで調整している。ジャケットの印象というのは、アルバムという音楽作品を鑑賞する上で大切なものだと思うからだ。ジャケットを見ただけで曲のフレーズが頭に浮かび、音楽体験を想起することがあるはずだ。
さてこのアルバムは、スラップ・ハッピーがヘンリー・カウと合体する形で作られたものだ。当時スラップ・ハッピーのヴァージン盤「カサブランカ・ムーン」に夢中だった俺には、このアルバムの中途半端さが耳について嫌だった。しかし、今になって聴いてみると、曲作りは丁寧だし、ユーモアのある曲にダグマーの声が鬼気迫るアンバランスを重ねるところが、いい。冗長に思えたB面最後の「Caucasian」の魅力も、今なら、わかる。当時はB面の5曲目まで聴いたら、レコードから針を上げていたのだが。
このアルバムは1975年に発表された。ここに紹介したのは、ビクター/ヴァージンから1980年に発売された、日本盤のアナログレコードだ。まだレコードが高価だった時代に、2000円という廉価で発売された驚きが忘れられない。このシリーズでヘンリー・カウやスラップ・ハッピーを聴いた人は多いだろう。そういう意味でも歴史的な意味を持つアルバムなんじゃないだろうか。日に焼けてジャケットの上部が変色していることが時代を感じさせる。日本語の解説が書かれたライナーを紛失していて、ちょっと悲しい。
2000.6.20