Beck Bogert & Appice / Beck Bogert & Appice


アルバムの解説で水上はる子さんは「アルバムを/2枚作って/やめる人」という自らの川柳を紹介し、グループを構成しては解消するジェフ・ベックの習性を紹介している。俺が高校生の当時、ギター・フリークには人気のベックだったが、俺はあまり気に入らなかった。それは「バンド」というものを大切にしない、少なくとも俺の目にはそう写った、姿勢が気に入らなかったというのが大きな理由と思う。だがこのアルバムでは、バンドというものの面白味が存分に味わえる。

ヴァニラ・ファッジとして活動中の頃からティム・ボガートとカーマイン・アピスに目を付けたベックが、彼らにバンドを一緒にやろうと声をかけていた話は有名だ。結局さまざまな理由の中で実現しなかった組み合わせが、数年の後にようやく実現することとなる。その喜びと自信に満ち溢れたアルバムが、これだ。

「トリオ」という構成が、ロックの最も根本的なスピリットを表現しやすいからかも知れない。全盛期のクリームには及ばないかもしれないが、パワーは決して劣らない。A面2曲目の「レディー」は、ヴォーカルやコーラス部分が「クリーム」的。時間も5分31秒とアルバム最も長く、3人のインタープレイも素晴らしい。またA面4曲目の「迷信」は最もアグレッシブで、ツッペリンにも劣らぬヘヴィーなサウンドが楽しめる。

B面1曲目「スウィート・スウィート・サレンダー」はヴォーカルが中心の奇麗なバラード、2曲目「ホワイ・シュッド・アイ・ケアー」は軽快なロックン・ロール、3曲目「君に首ったけ」はワウワウ・ペダルの使い方が絶妙のファンキーな曲。4曲目「リヴィン・アローン」はブルースを基本にした意欲的な曲で、場面展開が多く各プレイヤーの見せ場がある。おそらくライブではアドリブを長くとり、コンサートの盛り上がりを迎える曲だろう。シンコペーションの跳ねる感じがとてもいい。最後はボトルネック奏法を多用した静かなバラードでアルバムは幕を閉じる。バラエティに富んだ曲の集まったアルバムだ。

おっと今日はぜんぜんカルトじゃなく、超有名なアルバムだったな。このアルバムは1973年に発表された。CBS/SONYから発売された日本盤のアナログレコードだ。

2000.6.13